9mm Parabellum Bullet ALBUM「Dawning」ディスクレビュー

Dawning

ALBUM

9mm Parabellum Bullet

Dawning

EMI Records Japan

2013.06.26 release

完全生産限定 全ビデオクリップ付 SPECIAL EDITION <CD+DVD>
通常盤 <CD>


進化でも変化でもなく、ひたすら研ぎ澄ますこと

9mmのような特殊な音楽性、突出したパフォーマンス性を持つバンドが、結成から9年、オリジナル・アルバムにして5枚、その勢いを損なうことなく走り続けていることは奇跡的なことだ。エモ、パンク、メタル、歌謡曲、ハードコア……デビュー当初から非常に雑食性の高い音楽を絶妙なバランス(それを”アンバランスさ”と呼んでもいい)で鳴らしていた彼らにとって、音楽的に進化するということは、それと同時に何かを捨てることにもなりかねない。魔法のレシピはそこから何も足せない、何も引けないから魔法のレシピなのだ。どの曲も”9mmらしい!”としか言いようがない本作『Dawning』を聴けば、彼らがそのことに極めて自覚的であることがわかる。

では、デビューからずっと9mmは同じ場所に立っているのか? もちろん違う。本作で彼らは音楽的に進化することではなく、自分たちの音楽を研ぎ澄まし、磨き上げることに専念している。単純にコーラス部分のメロディに印象的なフックがあるのではなく、バースもコーラスもすべてがフックとなっているメロディ。単純にサビのフレーズが耳に残るのではなく、すべての言葉がキラー・フレーズとなっている歌詞。相変わらずどの楽曲も過剰な展開と過剰なアレンジが施されているようでいて、よく耳を傾ければ余計な音なんてひとつも鳴ってない、整理されて押し引きの効いたサウンド。結果、本作はひとつの”楽曲集”として9mm史上最も完成度の高いアルバム、言い換えれば、アルバムとして最も聴きやすい作品となっている。

往々にして、キャリアも実績もあるバンドが新しいリスナーにとっての入り口となるような、ある意味で”初心者向け”の作品を作ると、昔からのファンにとっては新鮮な響きを失ってしまうものだが、本作はそんな罠にもはまっていない。本作で9mmのアルバムを初めて聴くリスナーは、最初からいきなりこのバンドの核心に触れることができるし、これまでずっと彼らの音楽を聴いてきたリスナーは、バンドと共に大きな達成感を分かち合うことができる。まさに『Dawning』=”夜明け”の名にふさわしい、ここからまた9mmの新しい旅が始まることを高らかに告げる作品だ。

(宇野維正)

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