きゃりーぱみゅぱみゅ ALBUM「なんだこれくしょん」ディスクレビュー

なんだこれくしょん

ALBUM

きゃりーぱみゅぱみゅ

なんだこれくしょん

ワーナーミュージック・ジャパン

2013.06.26 release

初回限定フォトブック仕様 <CD+DVD>
通常盤/写真 <CD>


子供も大人も楽しめるポップでストレンジなきゃりーワールド

うちの娘(9才)が「ファッションモンスター」を好んで歌い始めたのは、放課後の学童クラブでくり返し聴いたからだった。そのうちわが子は僕が所有するきゃりーのCDをリビングに持ち出し、何度もかけては歌って踊るようになった。昨年、それまでは嵐が優勢だった子供たちの歌にきゃりーが乱入してきたのだ。

と、これは裏付け程度の話だが、きゃりーの歌は1stアルバムのあとから視線を子供たちに向けはじめた感がある。彼女のポップな歌やかわいいルックス、優しい雰囲気は小さい子にも親しみやすいのだろう。「キミに100パーセント」はTVアニメ「クレヨンしんちゃん」のオープニング・テーマになっているし、今春のワールド・ツアーはスタンディングのライブでありながら、2階席は子供連れのお母さんたちが購入できるように配慮されていた。

とはいえ、もちろんきゃりーの歌が好きな人は大人世代にも多い。前作はディズニーランドやユニバーサルスタジオを思わせるテーマ・パークのような構成で(先のツアーもファンタジックなセットや演出がほどこされたエンターテインメント性の高い内容だった)、それは一見子供向けのようでありながら、実際のテーマ・パークの来客層はむしろ大人のほうが多いように、きゃりーの音楽も世代を超えた普遍性を獲得しつつある。

それからもうひとつ、今回のアルバムの大きな特徴として、日本的なモチーフが多く見られる。これは振り袖、忍者といったシングル群からもうかがえた傾向で、「なんだこれくしょん」(「つけまつける」のアウトロと同じくバグパイプが聴こえるという芸の細かさ)や「み」では和太鼓の音色がフィーチャーされていたりする。おそらく、世界的な人気を背景にワールド・ツアーが決まったことからジャパネスクというテーマが出てきたのではないだろうか。

全体的にはクラブ・サウンドをベースにしており、トランス~EDM的なニュアンスもあちこちで見られる、楽しいアルバムだ。「インベーダーインベーダー」はダブステップの導入がマニアックな音楽ファンに話題になったし、「のりことのりお」は沖縄民謡を思わせる音階や南国的なアレンジが面白い。また、このへんの曲には奇妙なフレーズも多く、聴くたびに新発見がある。そう、きゃりーの世界はキュートでファンシーだけど、どこか狂気に近いような異質感もある。そこはグロさやエグさも好む彼女自身の趣向性だろうし(今回の通常盤のジャケットもそう)、また、そうしたストレンジ感やホラーっぽさもポップに表現してしまうところには、ディズニー作品やマイケル・ジャクソンとの近似性すら感じる。中田ヤスタカはきゃりー自身が持つ性質を深いところまで読み取っているのだろう。「ふりそでーしょん」や「おとななこども」で歌われている、子供と大人の世界の拮抗には、現在の彼女のリアリティが埋め込まれているはずだ。

日々のつまらないことやしんどいことを忘れて、思いっきり浸れるアルバム。そしてこの世界の出発点は、彼女がきゃりーぱみゅぱみゅと名乗ろうと決めたところにあったのだろうなと思う。というわけで、わが家も親子揃って、本作を目いっぱい楽しんでいる。

(青木 優)

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