THE BOOM ALBUM「世界でいちばん美しい島」ディスクレビュー

世界でいちばん美しい島

ALBUM

THE BOOM

世界でいちばん美しい島

YOSHIMOTO R and C

2013.06.19 release

<CD>


優しさとたくましさに包まれ、大切なものを想う一枚

自分の少年時代を思い出すとき、決まって頭に浮かぶのが夏の風景。ジリジリと照らす太陽を浴びながら、田んぼしかない田舎道を走り回っている僕と弟。あの夏の日の情景を、きっと原風景と呼ぶのだろう。そんな原風景を思い出すタイミングは、とびきり暑い日に吹き抜ける風だったり、夏草の匂いだったりするんだけど。THE BOOMの最新アルバム『世界でいちばん美しい島』を聴いて、僕は久々にそんな風景を思い出していた。

結成24周年を迎えたTHE BOOMが、“沖縄”をテーマに制作した最新アルバム『世界でいちばん美しい島』。シングル「島唄」発売から20年。今作では彼らが長らく向き合い続けてきた沖縄音楽を通じて、日本の美しい“心”を歌にして表現。ダイナミックなロック・ナンバー「世界は変わる」で始まり、今後も歌い継がれるであろう大名曲「島唄」、この島に生まれ育ったことの喜びと誉れを歌い、“もう放さない もう渡さない 世界でいちばん 美しい島”と強いメッセージを込めた「世界でいちばん美しい島」が今作を象徴する。「芭蕉布」、「やいま」、「バイバイ沖縄」といった沖縄民謡もTHE BOOMの解釈による歌と演奏で、歌詞の持つ意味や背景を感覚として理解している島んちゅでなくとも楽曲の世界観を共有でき、懐かしさや郷愁感を感じる楽曲に仕上がっている。

年間600万人近い観光客が訪れたり、“定年後は沖縄で余生を”などと夢見る人が多かったり、身近なリゾート地としてだけでない、心の奥底に訴えかけてくる何かが、人々を惹きつけてやまない沖縄。僕は母のように穏やかで優しく、父のように強くたくましいTHE BOOMの今作を聴き、原風景を思いながら“本当に大切なもの”を考えた。人を愛すること、生まれ育った土地を愛すること、自分を愛すること……本来、当たり前として持っていたはずなのに、慌ただしい毎日に忘れかけていた“大切なもの”をひとつずつ思い出しながら、僕は皆が沖縄に惹かれる理由が少しわかったような気がした。

今年もまもなく暑い暑い夏がくる。僕はとびきり暑い日に今作を聴きながら、いつまでも美しい、あの原風景を想うことにする。

(フジジュン)

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