MONKEY MAJIK SINGLE「Story」ディスクレビュー

Story

SINGLE

MONKEY MAJIKbi

Story

binylrecords

2013.06.12 release

<CD>


“始まり”は、美しくなくてもいい

 ’00年に結成されて以降、幅広いリスナーに長く愛され続けている数少ないアーティスト、MONKEY MAJIK。通算18枚目となる今作は、楽曲メッセージやジャケットのアートワークを含めて、前作「if」との連動型シングルとなっている。“別れ”をテーマとした前作に対し、“始まり”を歌う今作は、彼ららしい人肌の温もりを帯びた柔らかなポップスとなっている。

 MONKEY MAJIKがここまで愛され、対アーティスト、対リスナーに関わらず広い訴求力を持っているのは、シンプルな楽曲でありながらもそのなかに味わい深い物語を宿らせることができるからだろう。表題作である「if」は、朗らかなメロディでありながらも、複雑な感情や人間模様が、ある意味では生々しく描かれている。“始まり”をテーマとしながらも、決しておとぎ話のように輝かしくハッピー・エンドには終わらない。むしろ宙ぶらりんのまま、聴き手へ手放される。それは私たち人間の美醜入り交じる感情や心境が、歴然と描かれているということだ。

 綺麗な“始まり”などは、あり得ない。後ろ髪を引かれたり、躊躇したりしながらも、恐々と足を踏み出すのがありのままの私たちの姿だ。もし、前作と今作のテーマが入れ替わったとしても、彼らの音楽はそれを成立させることができるだろう。物事は表裏一体で、人は天邪鬼で、エゴイストで、不完全だ。だからこそ愛しい生き物だ。彼らの音楽にある種の赦しを感じるのは、そんな人間の生き様を温かなサウンドや歌声で包んでくれているからかもしれない。

 カップリング曲である「little things」は、ひとつの恋の終わりと、その延長線上にある微妙な距離間と後悔が描かれている。複雑な心境が朗らかにアコースティックで歌われている辺りに、主人公の強がりを感じさせる。これまたMONKEY MAJIKらしいひとつのドラマの作り方だ。

 彼らの視点で描かれる、柔らかでビビッドなヒューマン・ストーリー。今後も彼らの速度で、複雑なストーリーを優しく歌い続けてほしい。

(小島双葉)

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