カラスは真っ白 ALBUM「かいじゅうばくはつごっこ」ディスクレビュー

かいじゅうばくはつごっこ

ALBUM

カラスは真っ白

かいじゅうばくはつごっこ

SPACE SHOWER NETWORK

2013.06.05 release

<CD>


何度も繰り返して聴きたくなる、ナゾだらけのファンク・ポップ

 バンド名が「カラスは真っ白」で、アルバムのタイトルが「かいじゅうばくはつごっこ」。「かいじゅうファンク」という曲では、“この子、ねこの子?”や“にわとりと小鳥とワニ”、“恋なんかわかんない子”……と回文が炸裂。聴いていると脳がぐるぐるしてくるシュールさがあるけれども、音はソリッドでタイトなファンク・ミュージック。頭にハテナが浮かびながらも、いつの間にかそのグルーヴのカッコ良さやメロディのキャッチーさに痺れて、気づいたときには、“ひみつのことば あきすとぜねこ”(10曲目「ブライアンねこ」より)と鼻歌で口ずさんでしまっている。この感覚は、大貫妙子の「メトロポリタン美術館」や戸川順の「ラジャ・マハラジャ」など、小さい頃は訳もわからず歌ってたけど、大人になってもずっと心に残っている「みんなのうた」の感覚に近いかもしれない。

 カラスは真っ白は、ヤギヌマカナ(vo、g)、シミズコウヘイ(g)、ヨシヤマ“グルービー”ジュン(b)、タイヘイ(ds)からなる4人組のファンキー・ポップ・バンド。’10年5月に、ファンク/ジャズ/フュージョンをベースにもつ楽器隊が、“ポップでかわいいバンド”がやりたくなり、彼らが所属していたサークルの後輩である女性ボーカルのヤギヤマを誘い、結成。地元の札幌を拠点にライブ活動をスタートさせ、昨年6月には、初の全国流通となるミニ・アルバム『すぺくたくるごっこ』をリリース。待望の1stアルバムとなる『かいしゅうばくはつごっこ』では、前作の路線を踏まえつつ、ホーンセクション(3曲目「サニー・サイドアップ」ではソロ回しも)やエレピを導入し、さらにバラエティに富んだ、完全独自のファンク・ポップを聴かせてくれている。

 完全独自と書いたが、彼らは別に、人と違うことをやってやろうとか、びっくりさせたいという意識で、オリジナリティーを追求しているわけはないだろう。普通なんだけど、どこか変な感じなのだ。彼らの音楽は、あくまでも間口の開いたファンキーなポップ・ミュージックである。でも、やっぱり、どこかシュールで、ぐにゃりと歪んでいる。無邪気でかわいいんだけど、なんだかよくわからない部分もあるし、演奏はめっちゃパワフルで、汗も飛び交っているけど、その奥底には、勢いに流されないプロ意識というか、一人ひとりが自分のプレイに責任を持つことで生まれる緊張感が横たわっている。抽象的な絵本のような歌詞だって、パーカッシブな音の響きや口に出したときの面白さを優先させているようで、ホロリときちゃう切さなもある。その渾然一体となった変な感じの中心にある“得体の知れなさ加減”が、聴き手の興味をスリリングに惹きつけ、一度聴くだけでは収まらず、ついつい本気で聴き入り、何度も何度も聴き返したくなる所以なのではないかと思う。

(永堀アツオ)

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