SuiseiNoboAz ALBUM「ubik」ディスクレビュー

ubik

ALBUM

SuiseiNoboAz

ubik

cutting edge

2013.06.12 release


宇宙、青、14歳。そのただなかにいるミュージック

「俺は何も悪いことをしないで、良いことをできる場所を見つけた」。カート・ヴォネガットのSF小説「タイタンの妖女」で、水星に向かったボアズの言葉である。彼はそこで、振動を食べて生きる美しい生命体ハーモニウムに音を聴かせることに、自分の生きがいを見つける──。6月12日、そんなボアズの名を冠した高田馬場発3ピース・ロック・バンドのSuiseiNoboAzが、3枚目のオリジナル・アルバム『ubik』を、avex内のレーベル“cutting edge”よりリリースする。『ubik』といえばフィリップ・K・ディックのSF小説の名でもある。とすると、本作はロマンチックが荒ぶりまくるボアズ流のSFミュージックであることは想像に難くない。

 向井秀徳プロデュースの1stではヒップでホップな難解な展開が多く、かつメタリックな音質であったが、続く2ndではダブっぽさを持たせつつやわらかな音像。そしてなんといっても1stの“バカテクプログレモード”を超え、and Young…に通じるよりストレートでシンプルな曲構成、まっすぐどでかいサウンドになったのが印象的だった。そして今作ではエフェクト効果もあって、宇宙感が増している。特に「kamakura」、「Sweet Destruction」、「ubik」は路上のことを歌いながらも、壮大なスペース・ロマンのよう。

 リリックは山頭火とビートニクと散文詩が渾然一体となった趣。“俺は14歳で エレキギター買って ときめきの 革命を”(「tokimekinishisu」)、“僕らは14歳だった 掛け値なしの荒野を目指した”(「Sweet Destruction」)、“誰もが14歳で ビーチサンダルで 誰もまだ知らない ものを探している”(「ubik」)という歌が、今14歳のあなたを、かつて14歳だったあなたをグッとさせるだろう。そこに紫陽花、アカシア、彼岸花といった花々が散りばめられている。甘酸っぱくも決して感傷に浸らない、“そのただなかにいる”描写が素晴らしい。

 さらに言えば、ワードもサウンドもアルバムをまたいで続いていて、一本のロード・ムービー、一枚のタペストリーのようだ。水際、きれぎれ、コーラ、バビロン、環状線、給水塔──。あるいは2ndアルバム収録の「64」から今作の「elephant you」にいたる青春トーキング・ブルース。2ndの「14」から今作の「rock’n roll」へのくれなずむ夕日感も捨てがたい。

 そして、歌詞やジャケットをとおして滲む「青」。それは冒頭で触れたハーモニウムが、光に当たるとアクアマリンに輝く色にも見える。われわれがハーモニウムなら、ボアズの音をめいいっぱい食べようじゃないか。彼らの三位一体のグルーヴと歌ごころを感じてほしい。

(福アニー)

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