The Mirraz ALBUM「夏を好きになるための6の法則」ディスクレビュー

夏を好きになるための6の法則

ALBUM

The Mirraz

夏を好きになるための6の法則

EMIミュージック・ジャパン

2013.06.12 release

<CD>


サマー・ギフトを装った(!?)ロマンとラジカルの激白

“2013年夏、ミイラズが魂込めてお届けするサマージャンボ・ミニアルバム! 夏フェスや花火大会? あんなシーンこんなシーン…貴方の夏を彩るこの一枚!”。資料にあるこのキャッチ・コピーを鵜呑みにできるほど、ミイラズ・リスナーとしての自分は素直じゃない。殊に2枚のシングル「僕らは」「傷名」のシリアス・モードが象徴するメジャー1stアルバム『選ばれてここに来たんじゃなくて、選んでここに来たんだ』の次のリリースである。フロントマン・畠山承平のナイーブさを包むシニカルさ(その逆もあり)を踏まえた上でも、このミニ・アルバムが享楽的なサマー・ソングで構成されてるとは考えがたい。

 で、フタを開けてみると……『夏を好きになるための6の法則』は、畠山承平自身の「夏という享楽的な季節への忌々しさ」と「期間限定ならではの愛しく輝くものへの憧憬」両方をあぶり出すという一筋縄ではいかない構造を持っていた。

 具体的に書こう。アルバムは1曲目の「夏の屯田兵 〜yeah! yeah! yeah!〜」の冒頭からバンドが晒されている現状報告。その地メロは彼ららしいソリッドなリフを持ったダークなR&Rで、サビで陽光降り注ぐメジャー・キーへ変貌。しかもリリックで“サビだけはハイになって”という周到さ。中盤の怒涛のラップ・パートでは歯ぎしりしたくなる現状と、それでも自分にとって音楽だけは武器だというまるでインタビューいらずなリリックが展開。1曲の中でしれっと本質を突いてきた。また、何よりいい曲を作ること史上主義で、先輩同輩後輩のライブに行くのもめんどくせぇ、家で曲作ってたいという畠山のモチベーションを詳らかにしたその名も「名曲」(最新リテイク)があるかと思えば、地元である湘南・江ノ島の花火大会の淡い思い出を回想しながら、今、主人公は会社に酷使され疲弊し、ひとりの部屋でYouTubeをツマミに飲んでいるというシチュエーションの「Fireworks」。なんなんだ、このリアリティ。しかもこの曲、リズムにリゾーティなラテン・フレーバーをうっすらひいているのも心憎い。

 サザンオールスターズが描いたようなサマー・ラブ・アフェアは今やユース・カルチャーにおいて共有しづらいものではある。それでもR&Rミュージックはサマー・ソングに今を託す。バイトでこき使われて貯めたお小遣いで夏フェスに行って仲間と騒いで、もしかしたら恋の予感もあったりなかったり。’13年の夏を描くある種の責任感と言ったら少し重いが、ミイラズはトライした。一方でラジカルなバンドの姿勢をユーモアたっぷりに描きながら、一方ではファンの心情も(これまたシニカルさを含んではいるものの)さりげなく抱きしめる。これがミイラズなりのサマー・ギフトなのだ。となると、あながち冒頭のキャッチ・コピーも的外れとは言いがたいな。

(石角友香)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人