SALU – 多方面で注目を集めていたSALUが『In My Life』でデビュー。様々な経験を経た彼がラップで放つ言葉、そこに込めた思いを語る。

SALU

生まれは札幌。14歳でラップを始め、18歳のときに神奈川へ移住した。その後、彼が歩んだのは流転の人生とも言うべき道のりだった。彼のもとに最後まで残ったラップには、流浪の民としてサバイブしてきた人生模様と哲学を映し出すフロウが確立された。ミニ・アルバム『In My Life』でメジャー・デビューするラッパー、SALU。ぜひとも幅広いリスナーに触れてみてほしい存在である。

INTERVIEW & TEXT BY 三宅正一

僕の人生も誰かにいい影響を及ぼすことができたのかなって思います

──ここに至るまでのSALUさんのバック・グランドを知れば知るほど起伏に富んだ人生だなと思うんですけど。

いや、でも、まあ、こういうやつもいるっすよ。ずっと幸せで、お金もあって、家もあって、いい大学も出て、いい会社に就職してっていうやつも周りにいますけど。でも、そいつの人生にも必ず何か影の部分はあって。だから、比べることでもないかなって思うんです。今、札幌時代の仲間——FRAMEっていうラッパーがいるんですけど、最近“こっちで勝負する”って上京して。そういう意味では僕の人生も誰かにいい影響を及ぼすことができたのかなって思いますけどね。

──自分の人生を考えて、ヒップホップという音楽表現を選んだのは必然だと思いますか?

いや、まだわかんないですね。それは最後の瞬間にわかればいいかなって。今はまだ、たまたまだったのかなとも思うし。14歳のときにKICK THE CAN CREWの「カンケリ01」に刺激を受けてラップ始めたときは、言葉遊びの面白さと単純な憧れからマネするという感じだったんです。そこからは、ただ続けたいというそのときどきの気持ちでずっとやってきたんですよね。でも、いつの間にかやめられなくなっていたんですよね。

──それを自覚したのはいつですか?

シンガポールに行ったときですね。19歳です。

──シンガポールでラーメン屋の店長をやっていたんですよね。

そうなんですよ(笑)。

──どういう経緯で向こうでラーメン屋の店長をやることになったんですか?

18歳のときに札幌から神奈川に来て、建築を学びたくて大学に入ったんですけど。でも、大学に入ったら“なんか違うな”と思って1年ちょっとで退学したんですね。そのときは自分のやりたいことは音楽だってまだ気づいてなくて。大学を辞めたのはいいけど、何をするでもなく、いろいろあって家族もバラバラになって家もなくなっちゃって。毎日、厚木の街をさまよう生活が始まったんですね。外で寝たりとか。

──でも助けてくれる仲間はいたんですね。

そう、厚木の仲間に助けられましたね。最終的にはみんな音楽の縁で繋がった人たちです。ホントに感謝してます。

──でも、その日暮らしの生活から抜け出せる見通しはつかなかった。

そうっすね。そのときに街を歩きながら頭の中でフリー・スタイルをやったり、契約を止められて電波の入らない携帯電話にリリックをメモしたりしていたんです。そこらへんにあるコンセントを借りて充電しつつ(笑)。それしかやることがなかったんですよね。

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自分はそこまで大変な状況じゃないと自分に思い込ませていた

──物質的に何もないときもラップは出てきたんですね。

ずっと街を歩いていたので。目で見たものをそのままリリックにしてました。例えば厚木は怖い側面もある街だから、路上でいろんな事件が起こるんですよ。その被害者の気持ちを書いたり、自分と同じように浮浪している人たちのことを書いたり。

──そこに自分の心情は乗せなかったんですか?

あまり乗せなかったんですよね。自分自身からは目を背けていたので。

──自分と向き合うとしんどくもなるし?

たぶんそうだと思います。だから、あくまで街の観察者として自分のアイデンティティを保って、自分はそこまで大変な状況じゃないと自分に思い込ませていたんだと思うんですよね。で、そんなときに知り合いを介してシンガポールに行く話がきたんです。シンガポールに出店するラーメン屋の店長を探していると。“行きます”って即答しました。“家もあって、食べるものもあって、給料も出るなんて最高じゃん!”って思って。

──そこから向こうで労働の日々が始まった。

がむしゃらに働いたんですけど、そのときに頭の中のフリー・スタイルが一瞬消えたんです。日本から、友だちから、音楽から、遠ざかって、英語をちょっとしかしゃべれない日本人がやってるシンガポールのラーメン屋の店長になったんです。お金はある。でも、何もすることがなくて。日本人街で高い焼肉を食べてもなんにも面白くない。そんなときにふと、YouTubeで日本人のラッパーの動画をいろいろ観ていたら、SEEDAさんの曲に行き着いて。SEEDAさんのラップに触れてすげえモヤモヤして。自分はここで時間をムダにしているんじゃないか、悔しいと思ったんです。

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