いきものがかり SINGLE「1 2 3 ~恋がはじまる~」ディスクレビュー

1 2 3 ~恋がはじまる~

SINGLE

いきものがかり

1 2 3 ~恋がはじまる~

EPICレコード

2013.06.05 release

<CD>


リアルとファンタジーの間で繰り広げられるいつかの初恋

 ’13年第1弾シングルとなる「123 ~恋がはじまる~」は、昨夏にリリースした前シングル「風が吹いている」とは、両極のポジションにある楽曲だろう。「風が吹いている」はシングル曲としては異例の7分40秒にも及んだ超大作(いきものがかり史上最長タイムの楽曲!)。片や「123 ~恋が始まる~」は一度耳にしたら誰もが口ずさめてしまうポップさを持ったこれぞシングル曲! といえる歌。とはいえ、これまでも様々なタイプの楽曲を作ってきたいきものがかりの振り幅の広さを思えば、両極な場所にあるこの2曲を、シングルとして発表できてしまうのは、いきものがかりらしい強みなのかもしれないと改めて思った。

 「123 ~恋が始まる~」は、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で大注目の能年玲奈ちゃんが出演している“カルピスウォーター”CMソングだが、爽やかで明るくて、キュートなCMの世界観を彼らはストレートに楽曲に注入。作詞作曲を手がけた水野良樹は、「リアルな恋を書くというよりは、あんなかわいい女の子がいたらいいなとか、こんな恋がしたいなっていうようなファンタジー感や憧れみたいなものが出せたらいいなと思っていた」とコメントしていたが、この曲のMVでも、学校に遅刻しそうな女子高生が食パンをくわえて走り、しかも、途中で自転車に乗った男子学生とぶっかっちゃって、実はその男子は転校先の学校で同じクラスだった! なんていう、まるで少女マンガのようなストーリーが展開。そんなベタな物語が似合ってしまうのも、この楽曲がファンタジー感を持っているからだと思う。とはいえ、水野はファンタジーな物語に、ほんのちょっぴりリアルな日常観を入れ込んでいる。リアルな描写とファンタジーのさじ加減が成立しているからこそ、聴き手がこの歌を耳にする日常と歌との距離は、ぐっと近づくのだろう。また、ボーカル・吉岡聖恵は主人公の女の子のキャラクターを的確に捉えたうえで、歌い手として主人公と絶妙な距離感を保ちながら、爽やかな恋心をサラリと聴き手の中へと投げている。それによって、この歌は10代だけではなく、どの年代の人も初恋やいつかの恋を思い出しちゃうような歌になるんだと思った。

 カップリング曲は、カントリーチックな「あしたのそら」。作詞作曲を手がけた山下穂尊は、「茜色の約束」(7thシングル)のサビにあった“泣いて笑って繋いだその手”というフレーズを、あえてそのままこの歌に盛り込んでみるという面白い試みをしている。また、句読点を付けたり、“~ます”という書き方をしていることもあり、手紙のような雰囲気を作った。自分たちに向けた手紙のような「あしたのそら」は、彼らの等身大の姿を映し出した歌だと思う。

(松浦靖恵)

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