HaKU MINI ALBUM「wonderland」ディスクレビュー

wonderland

MINI ALBUM

HaKU

wonderland

EMI Records Japan

2013.06.05 release

<CD>


疾走する音、鋭利な言葉。歓喜に彩られた未来のための音楽

 心に巣喰らおうとする怪しい影。健全な視界をさえぎる、あるいは奪っていく、漆黒の闇。対峙するのは決してたやすいことではないけれど、それでも抗っていく。振りはらい、切り裂いて、その先へと突き抜けていく。まっすぐに放たれた矢のように美しく疾走する音と、的に確実に射抜いていく弾丸のような鋭利な言葉で。

“悲しみの連鎖を・・・止めてよ”という切望が溢れ出るフレーズで幕を開ける、作品集。「ショウガイレンサ」のこのフレーズひとつで、その言葉に持たされた温度で、HaKUが、ソング・ライターの辻村が、何を歌いどんな音を鳴らすためにこの作品集を作り上げたのかが、もう一瞬で伝わってくる。耳を傾けずにはいられない、どうしたって心を揺さぶらずにはいられない……そして訴求力に満ちたその導入部は、やはりそのまま本編の象徴でもあった。

 甘い幻想なんて、魔法の塗り薬があたかも存在するようなギミックなんて、このアルバムに収録された楽曲にはひとかけらすら表現されていない。憂いを湛えたメロディと、強さときらめきを兼ね備えたフレーズとリズムをタペストリーのように鳴らし続けるアンサンブルの妙と、“泣き”を内包した透明感ある歌声が描くのは、生々しいまでの現実世界と心象風景。アルバムのラストに収められた「優しいモノと複雑なモノ」で吐露されているように小心者で不甲斐なくて、そしておそらく生きることに器用ではない人が、それでも覚悟と決意をもって明かりを灯そうと、光を引き寄せようと、疾走し目に映る闇を射抜いていかんとするその姿に確かな希望を感じるのは、私だけではないと思う。

 そうだ。ここで鳴り響いているのは、歓喜に影られた日々が、世界が、いつか必ずやってくることを信じて前進し続けるための、喚起の歌。穏やかで優しい未来を希求する、だからこそ行動する人と共に在る歌なのだ。感動、なんて言うと安っぽく思われるかもしれないが、この作品集を聴いて覚えるのは、震えるくらいのその感情だ。

(竹内美保)

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