FoZZtone ALBUM「Reach to Mars」ディスクレビュー

Reach to Mars

ALBUM

FoZZtone

Reach to Mars

TIME’S MARK/SPACE SHOWER MUSIC

2013.06.05 release

<CD>


本能へ到達する、悦びの10曲

 たぶん、この人たちはなんでもできてしまう。ギミックを散りばめた4thアルバム『INNER KINGDOM(内なる王国)』でリスナーに音楽脳トレの愉悦を与えてくれたかと思えば、今作では問答無用のストレートで自由な曲たちで、私たちの感性をダイレクトに震わせる。軽やかに行われるそれは、実は常人には途方もない所業だ。一般的にそういう人物を“天才”と呼ぶが、FoZZtoneはまさにふさわしいアーティストだと思う。

 結成10年目に放たれた今作は、“バンドのキャリア史上最も身軽で爽快”と渡會将士(vo、g)自身が評しているように、シンプルでダンサブルな悦びのナンバー揃い。「世界の始まりに」が鮮やかに鼓膜をブレイク・スルーし、「情熱は踵に咲く」の粘度のあるスパニッシュなサウンドが脳裏にこびりついたかと思えば、アコースティックな「She said」で哀愁を香らせる。

 オムニバス・ドラマのように色彩豊かに描かれる曲たちは、それでいて一貫性を保ったまま駆け抜ける。その一貫性とは“生きることの悦び”だと、私は思う。彼らの音楽にブレずにあるのはまさにそこである。それは、震災前後で摩耗するほど出し抜けに濫用されていたものとは違い、よりベーシックでシンプルな、人種や年齢という枠組みをはるかに飛び越えたプリミティブな悦びだ。だからこそFoZZtoneのメロディ、サウンド、リズムというのは本能に心地よく浸透する。

 表題作である「Reach to Mars」は、この作品のラストに相応しく壮大で爽快な、FoZZtoneらしい本当に最高の1曲となっている。この“Reach to Mars”は、渡會いわく“火星までの距離”や“火星に到達せよ”という意味で使われているそうだ。火星へのはてしない距離を、私は埋めることはできない。その間に介在しているものを、私は一生かけても把握できないだろう。それはある意味で、無限の希望に満ちているということなのだ。いつかきっと、人類は到達してくれる。私の実体は最早なくても、それは当然の悦びとして、確実に未来へ存在しているのだ。それは、このアルバムの再生ボタンを押す前に指先がワクワクしていた、あの感覚に少し似ている気がする。

 7月からは今作を引っ提げた全国ツアーを敢行し、9月には赤坂BLITZにてファイナルを行うFoZZtone。その後の予定は未発表となっている。10周年目の彼らの航海は、果たしていずこへ到達するのか。楽しみにしておきたい。

(小島双葉)

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