SALU MINI ALBUM「In My Life」ディスクレビュー

In My Life

MINI ALBUM

SALU

In My Life

トイズファクトリー

2013.06.05 release

<CD>


“自身”をとおして“今”を映し出すSALUの新作

SEEDAやSIMON、KYNといったアーティストの作品に参加しその知名度を高め、昨年はブラック・ミュージック系屈指の名プロデューサー・BACHLOGICの立ち上げたレーベル“ONE YEAR WAR”に参加、アルバム『In My Shoes』をリリースしたラッパー・SALU。そのアルバムはヒップホップ・シーンのみならず、ロックやポップス・リスナーにも届き、今年は“ARABAKI ROCK FEST.13”にも招聘されるなど、自分のテリトリーを広げている。

 彼の新作となる『In My Life』は、アルバムから現在までに発表された配信やシングル、そして「In My Life」「Changes feat. Mummy-D( RHYMESTER)」「In My Life(REMIX)feat. PES」の新録曲を一枚に纏めた構成となっている。

 アルバムとしてトータル・コーディネートされた『In My Shoes』、シングル集的な意味合いのある『In My Life』。そういったパッケージ的な違いもあるが、より大きな違いは、その視点の置き方だろう。『In My Shoes』が彼自身をも含めた大きな視点で書かれていたとしたら、今作は彼の目から見た視点、つまり主体的であったり、自己に目を向けた視点が印象的だ。例えば、「In My Life」での“僕は未来の事など知らない/2秒先の事だって解らない/だからもう誰も止められない”という、諦念のうえで、そこから自らに希望を見出すリリック、“変わらないモノは目に見えない 見えてるモノは全て変わっていく”と、自らの無常観ともいうべき言葉を描く「Changes~」。そういった部分からは、彼の根本的なマインドの有り様が透けて見えるようだし、前作よりも“彼自身”という部分がリリックに強く表れている。

 そういった部分は、日本語ラップ・クラシックからのリリックの引用を感じる「Changes〜」の1フレーズや、スチャダラパー「サマージャム95」と同ネタを使った「鵠沼フィッシュ」、そしてMummy-DとPESというベテラン・ラッパーの起用という部分からも感じる。彼のラップの原点であろう部分からの影響とその提示、そこからは“彼自身”を明らかにしたいというような感覚を覚える。

 リリックの書き方も本当に巧みだ。前述の「In My Life」の諦念からガラッと希望を生み出す話の展開であったり、同曲の“you drive me crazy”というリリックから感じる、“you”という曖昧な主体を想定することで、よりリスナーの“のりしろ”が大きくなる構成。「Rebirth」での1バース目では“クソ”だと言った“世界”を、その後の話の展開によって2バース目では“美しい”と転化させる進め方……ナイーブな内容も含め、そういった部分が、日本語ラップ外にも大きなアピールができている要因にも思える。

 これ以上ない“現状報告”をはたした彼の、次のアルバムはどのような形になるのか、それを期待させるに十分な作品だ。

(高木“JET”晋一郎(ONBU))

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人