じん(自然の敵P) ALBUM「メカクシティレコーズ」ディスクレビュー

メカクシティレコーズ

ALBUM

じん(自然の敵P)

メカクシティレコーズ

IA PROJECT

2013.05.29 release

初回生産限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


類い稀なるエンターテイナー、じん(自然の敵P)完成系

 音楽と小説と映像を紡ぐ“カゲロウプロジェクト”なる、ネット時代ならではの拡散を続けるエンターテインメント作品をご存知か? そもそも音楽シーンでは過去、ザ・ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』、デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』、ザ・フー『四重人格』などコンセプト・アルバムがヒットする歴史があった。しかし、YouTube、着うた、iTunesなどニュー・メディアが浸透して以降、単曲至上主義の波には勝てず、アルバムがアルバム作品である意義は崩れたように思う。そんななか登場した、音と物語を創造する唯一無二のストーリーテーラーじん(自然の敵P)の存在は、アルバム作品の復権につながる音楽シーンにとって大きなターニング・ポイントとなるだろう。

 ネットで火がつき、謎が謎を呼ぶ展開が話題となった“カゲロウプロジェクト”は、’11年2月“ニコニコ動画”に、デビュー曲「人造エネミー」がアップロードされたことによって始まった。その後、動画再生数は関連総数が2,000万再生を越え、1stアルバム『メカクシティデイズ』はオリコンウィークリー初登場6位を記録。続く、1stシングル「チルドレンレコーズ」はオリコンウィークリー初登場3位にランク・インした。さらに自身が執筆したアルバムでの物語を補完する小説版は累計70万部を突破。新人アーティストが売れないと言われる音楽シーンの在り方を、音楽原作を軸としたメディア・ミックスなアプローチで再定義した。さらにコミカライズ版もヒットし、今後アニメ化も準備されているという。そう、創造力の固まりである音楽は、どんなメディアにも色濃く溶け合える存在なのだ。

 ボーカロイド・クリエイターというポジションを超えて、じん(自然の敵P)という類い稀なるエンターテイナーが提議するエンターテインメント物語。すでにオリコンデイリーランキング1位を記録して話題騒然な2ndアルバム『メカクシティレコーズ』では、前作では謎として残された物語の解明、驚きの展開が詰め込まれている。まさにパッケージありきなCDというメディアを最適化した作品だと思うワケで、“CDショップ大賞”なるアワードが日本であるが、必ずや大賞にノミネートすべきだと思うのだ。

 本作の聴きどころは、先行シングルで大ヒット中の「カゲロウプロジェクト」主題歌的存在な「チルドレンレコード(Re
Ver.)」はもちろん、ギター・カッティングが絶妙に感情をアップリフトさせてくれる「夜咄ディセイブ」、軽やかなポップ・センスに注目したい「夕景イエスタデイ」、物語のコアを担う泣きのミディアム・チューン「アヤノの幸福理論」など、快楽ポイントの高いサウンドが満載。物語が結末へと向かっていく意味深な歌詞世界という情報量の至福の洪水から耳と目が離せないっ!

(ふくりゅう(音楽コンシェルジュ))

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