WHITE ASH SINGLE「Velocity」ディスクレビュー

Velocity

SINGLE

WHITE ASH

Velocity

バップ

2013.05.22 release

※メジャーな仕様(初回生産限定盤、WHITE ASH特製メジャー封入)
※メジャーなし用


のび太くんの、強烈

 ’06年に結成された4人組ロック・バンド、WHITE ASHの快進撃が止まらない。ライブの動員もセールスもものすごい勢いで右肩上がりに上昇しているなと思っていたら、あっという間のメジャー・デビューである。このバンドにはメジャーだからこそ使える特権を大いに利用してもらいたいと思うし、言われなくてもそのつもりだろう。

 このバンドが発している中毒性のすべては、フロントマンでメイン・ソングライターの、のび太という男が象徴している。風貌が国民的ネコ型ロボットマンガ/アニメの実質的な主役である“あの、のび太”に似ているから、のび太と名乗っているわけだが、その名をまとっているからこそ人を食った遊び心を実践しやすいところも大きいと思うし(ライブ前の煽りでネコ型ロボットを思わせる声を登場させたり、アーティスト写真にドレッドやアフロ・ヘアの黒人を起用したり、本作がメジャー・デビュー盤だからメジャー付き仕様の盤を作ったり……)、リスナーに楽曲が届くまでに予期した以上のバズが起こることもある。

 サウンドは別段目新しいわけではない。しかし、オルタナティブ・ロックのスタイルがもはやスタンダードになった昨今、WHITE ASHのサウンドには時代の王道をいくオーセンティックな説得力がある。ときにグランジを想起させる演奏の迫力、のび太が紡ぐ変幻自在のメロディに帯びるブルースのにおいも魅力的だ。英語と日本語が8対2くらいの比率で混ざり合ったリリックは、至極アブストラクトな感覚を視覚的に映えさせることに成功している。

 変声期直前の状態にあるようなのび太の声色は、中性的で未発達な色気と不敵さをたたえていて、特にライブでその見た目と声のアンバランスさに触れたときの刺激は特異な有毒性をはらんでいる。

 このシングルを皮切りに、ロック・シーンだけではなく、ポピュラー・ミュージックの世界にも侵入し、思う存分引っ掻き回してほしいと思う。

(三宅正一)

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