THE NOVEMBERS SINGLE「Fourth wall」ディスクレビュー

Fourth wall

SINGLE

THE NOVEMBERS

Fourth wall

DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT

2013.05.15 release

<CD>


前作とはコインの裏表関係のような硬質な仕上がり

 昨年、EP「GIFT」がリリースされるタイミングでTHE NOVEMBERSのリーダー、小林祐介と初めて取材で会った。華奢でフェミニンな雰囲気も想像以上だったが、それ以上に驚いたのは、彼は自分たちのポップ・ミュージックを通じてすでにある価値観に強く疑問を投げかけているということだ。例えば、彼はこういうものが女性的でこれが男性的、という固定概念を崩すことをひとつの目標としているところがある。シガー・ロスやパフューム・ジニアスなど性差を感じさせないサウンドをめざしてその前作「GIFT」で管弦を取り入れたのも、そうした意識の表れだったのだろう。しかしながら、それもまたひとつの側面にすぎない。このニューEP「Fourth wall」で小林らが伝えようとしているのはそうしたアンビバレントな思いではないかと思う。ダンスならダンス、ロックならロック、スタジオならスタジオ、ライブならライブ……とどちらかだけでは決して自分たちの考えうるポップ・ミュージックにはならない、と。

 そういう意味でも「GIFT」とは対をなすようなEPだ。去年会ったときに「次もこういうオーケストラルな内容になるか?」と聞いたら、ニヤリと笑い「いや、違うと思います」と答えた小林。なるほどここまで正反対の作品を用意してくるとは驚くばかり。なにしろここにはストリングスやブラスはない。あるのはノイジーでハード・エッジなギター・サウンド……もとい硬質なバンド・サウンド。しかも、ディアハンターやゴッドスピード・ユー!ブラックエンペラーのような衝動ありきの演奏だ。

 例えば1曲目「Krishna」などはインダストリアル・ロック~ドゥーム・メタルを彷彿とさせるイントロに始まり、ジワジワと熱量を高めていくような展開。2曲目「dogma」3曲目「primal」あたりはかなり挑発的でアタックの強いギター・ロック。かと思えば、「Fiedel」などはシューゲイザー・サウンドのような軽快さも見せる……という具合。ただ、どの曲も絶望の淵に立たされた者の断末魔のような痛み、ダークネスに支配されている。なのに、その重み、痛みを受け入れながらじっと聴き続けていると次第に美しさへと昇華されていく。それはホワイト・ノイズが実は快楽性と美を伴っているのと似ている。前作「GIFT」がストリングスなどで一見心地よさを演出しつつも、特有の重さをはらんでいたのとはまた対極だ。

 次のフル・アルバムで彼らはこうした二極性をどのようにひとつに表現していくのだろう。そして、彼らはJポップという範疇の土俵上で勝負しているバンドとしてどのようにそれを伝えていこうというのか。小林らが夢想するそんな壮大な計画に、筆者も同じようにアンビバレントな指向を自覚するリスナーとしてかけてみたいと思っている。

(岡村詩野)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人