さめざめ ALBUM「さめざめ問題集」ディスクレビュー

さめざめ問題集

ALBUM

さめざめ

さめざめ問題集

ビクターエンタテインメント

2013.05.15 release


最高に恐ろしく、最高にいじらしい「問題集」

“コンドーム”や”SEX”という言葉は、一般的に”エロ”と認識されるだろう。それを前提として私は、さめざめのベスト・アルバム『さめざめ問題集』のレビューを書いていこうと思う。

 インターネットが一般的に普及して十数年。今ではエロビデオやらエロ画像やら、エロと名のつくものはそれまでと比べてインスタントに入手出来るようになってしまった。それに伴ってエロに対するタブーの意識ハードルは格段に下がり、我々の生活の中に蔓延するようになり、元来エロが持っていた尊さというものは地に落ちたと言っていい。音楽の中にあるエロもそうで、エロチックなリリックやセクシーな旋律は溢れかえっているけれども、こんな時代ではもはや味気のない、野菜か果物が並んでいるような光景にしか見えないのだ。

 そんな現状に一石を投じたのは、タイトルや歌詞に含まれる単語から一部放送でオンエア自粛となるなど、過激なトピックで話題となったアーティスト、さめざめだ。’12年12月に「愛とか夢とか恋とかSEXとか」でメジャー・デビューした彼女。聞き返したくなるようなタイトルに、私ははじめ眉をひそめた。(また過激な言葉とエロをウリにしたアレか)と。再生ボタンを押して、それはとんでもない思い違いだったとすぐに気付いた。ピアノの音色に乗せられたイノセントな歌声が紡いでいたのは、彼女の物語であり、私の物語であり、私の周りにいる全員の物語だったのだ。

 彼女の歌、彼女の言葉はむごいほどにリアルで、だからこそ血が通った音楽といえる。そこには本来エロにまつわるものが持つべきプリミティブな求心力が息づいており、男と女の性愛の現実がコントラスト強めに描かれている。しかしそこに下品さは皆無で、あるのは気高くもいじらしい普通の女性像なのだ。恐らく彼女は、性の哲学だとか、ここに論じているような理論だとかは心底どうでもいいだろう。ありのままの生き様を正直にさらけ出しているだけなのだから。だがそれが良い。だからこそ、ネットに溢れる性情報を真顔で眺め、彼氏の携帯をチェックし、夜な夜な鍵付きのTwitterアカウントで鬱々とした思いを吐き出す女性たちから、すがるように手を伸ばされたのだ。

 この作品に並ぶ曲たちは”問題作”と称された。しかしそれは本当に表面的な問題で、このベストに並ぶ楽曲はどれもが女性たちへの最高のエールだ。さめざめ入門編として、女性たちにぜひ一度聴いていただきたい。

(小島双葉)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人