百々和宏 ALBUM「ゆめとうつつとまぼろしと」ディスクレビュー

ゆめとうつつとまぼろしと

ALBUM

百々和宏

ゆめとうつつとまぼろしと

日本コロムビア

2013.05.15 release


酒とロックと人生と。アルコール度数上昇のソロ2作目

 そうそう、百々ってこういう奴だよな……と、つい思ってしまうアルバムだ。本家のMO’SOME TONEBENDERと、最近ではgeek sleep sheepでの活動もくり広げている彼だが、ソロ作品ではこの男の素顔がそのまま出ている印象である。

 去年の初ソロ・アルバム『窓』から貫かれているのは、ものすごく素直に流れ出ているかのような歌メロだ。そこにはちょっと肩の力を抜いたような感触があって、じつに新鮮。その上にカバーもあり、今作ではTレックスと山口百恵を歌っていたりと、やりたいようにやってる感がいっそう強い。しかも曲のタイトルを見ると、「ロックンロールハート(イズヒアトゥステイ)」(前作収録曲の続編)はルー・リード、同じ福岡出身のZAZEN BOYS・向井秀徳が客演した「ともをまつ」はローリングストーンズを、それぞれ想起してしまう。これらはどれも30年以上も前の曲だが(笑)、そうしたルーツをポロッと見せているところからも、ソロでの百々が自然体でやっているのかがわかる。もっとも裏を返せば、つまりモーサムでの彼がいかにテンションを上げ、メンバー同士で剣を突き刺し合うかのような関係の中でやってきているか、ということでもあるが。

 自らのバンド、テープエコーズとのライブがかなり楽しかったようで、前作のパーソナルな世界からちょっと広がって、今回は仲間たちとワイワイやっている感覚が加わり、曲自体も仲間や友人を歌ったものが目立つ。音像は全体にソフトで、気持ちサイケ入った感触だ。そのフワリとした空気は、まるで百々と酒を酌み交わしながら、楽しい話やくだらないネタ、時にはマジなこと、あるいは夢やらグチやらをアルコールとともに吐き出しているような錯覚に招いてくれる。そこにこの男の優しさ、大らかさ、繊細さ、時に情けなさ、あとは人生とか青春、ロックンロール……そういった、いろんなものが滲んで見えるのだ。

 だからこれは名盤というより、酩盤である。そう、酩酊の「酩」で。

(青木 優)

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