つづくバンド ALBUM「眠らぬ街」ディスクレビュー

眠らぬ街

ALBUM

つづくバンド

眠らぬ街

DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT

2013.05.15 release

<CD>


眠らぬ街で生きる上京少年、そのホロ苦い心模様

 青春って何なのか? 夢を追い求めるってどういうことなんだろう? 僕はそんな青臭いことを思い出しながら、東京の青く晴れた空を見詰めながら、真っ直ぐな歌ものロックが詰まったこのアルバムを聴いている。

 現在21歳の都筑(つづく)祥吾は長野の出身なのだという。彼は地元の高校を中退し、バンド活動を続けていたが、やがて上京。しかしその後の音楽活動はなかなかうまく軌道に乗らなかったようで(現在もベーシストはサポートが入っている状態)、彼自身の名前を冠したこのバンド名も、そもそもは臨時のものだったそうだ。

 そんな背景を知るといっそう響いてくるのだが、つづくバンドの歌には上京少年の心模様が見える。この1stフル・アルバムのタイトル曲といえる「眠らぬ街の眠らぬ夜」には、田舎から大都会に出てきた人間特有の高揚と不安が揺らめいている。あるいは「105号室」という歌では、自分が引っ越して出ていく部屋を思いながら、そこで湧き上がる期待、切なさ、孤独感が描かれている。この場所でどう生きていくのか。果たして自分は夢に近づいていってるのか。都筑は、そうした理想や悩み、希望や煮詰まりの中でもがきながら歌っているかのようだ。その舞台は、彼の場合は東京だったが、違う場所でももちろんいいだろう。近い経験をした人は多いと思う。

 そしてこのアルバムの歌たちのそうした青臭さの波間に、いくばくかの苦みを感じるのは、都筑自身も自分が青春ど真ん中ではなくなってきつつあるのを自覚しているからだろう。変わらない、変われない自分。かと思えば、気がつくと変わっていってる自分。次々に人生を決めていく旧友、迷ったままの友人。「未来のバトン」で都筑は“バンドなんて今は時代遅れだよと”いう声を聞きながら、“それでもあの日のおれが 報われるように”と歌う。「僕らの夜明け」では“海へ出ることを決めたんだ”と力強く歌うのだ。それも主語は自分だけじゃなく、“僕ら”という複数形で。
 焦燥に煽られ、希望と絶望の中で、それでも前に進みたいと思っている人ならば、きっと聴く意味のある作品だと思う。

(青木 優)

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