真空ホロウ MINI ALBUM「少年A」ディスクレビュー

少年A

MINI ALBUM

真空ホロウ

少年A

EPICレコード

2013.05.08 release

<CD>


真空ホロウにしか歌えない歌がここにある

 後悔や葛藤が渦巻く混沌とした世界観や、巧妙なアンサンブル、さらにメロディの美しさ──真空ホロウといえば、そんなキーワードを思いつく人も多いかもしれないし、どれも正解だと思うけれど、私が彼らのライブを観たときに最も印象に残ったのは、ぐいぐいとオーディエンスを引っ張っていくたくましさだった。そんな彼らの実像が2ndミニ・アルバム『少年A』には反映されているように思える。
 なんたって1曲目は、タイトルからして「アナフィラキシーショック」であり、非常に熱量が高く疾走していく、ダイレクトに過激な楽曲なのである。さらに「思春の生贄」は、サビでぱっと開けるような展開に心を揺さぶられる。「娼年A」は、松本明人の艶やかな歌声が引き立っている歌謡ロック。「4月某日」は、濃く切ない、彼ら流の春のバラード。「Balance cont(r)ol」は、実はアマチュア時代の代表曲だった、4つ打ちのダンス・ナンバー。……と、思わず一曲ずつ触れてしまったが、これで、バラエティに富んでいながら、全方位に攻撃を仕掛けている作品であることが伝わるだろうか? 昨年メジャー・デビューを果たしたが、落ち着くことなく、むしろ攻めていくということに対して、かなり意識的に取り組んでいるのだと思う。もっと言えば、自分たちのタブーを取っ払い、世の中のタブーに対峙し、飽くなき表現を追求していこうとしているのだろう。そこからは、彼らが真空ホロウらしさを熟考していることが伺える。
 今作のラストに収録されている「ミラードール」は、東日本大震災後、混乱の渦中の中で書かれた楽曲だという。ストリングスが壮大に盛り上げるなかで、切々と歌われる“同じ時代を生きている 僕らは/同じように生きたくて 君のようになりたくて/いつもちょっと死にたくて”という言葉。倫理観や正義感のフィルターを通さずに、ふと日々の中で生死に向き合うときって、こういうことを考える場合が多いんじゃないだろうか。そして、こういうことこそ、真空ホロウだから歌えるんじゃないだろうか。
 状況的にもバンド的にも、万全の状況が整った今、やりたいこと、やるべきことを見事に完遂した一枚だと思う。

(高橋美穂)

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