キノコホテル MINI ALBUM「マリアンヌの逆襲」ディスクレビュー

マリアンヌの逆襲

MINI ALBUM

キノコホテル

マリアンヌの逆襲

yamaha music communications

2013.05.01 release

<CD>


より現代に効力をもった強力なカバー・アルバム

「あの頃は良かった」なんて、オッサンみたいなことを言う気はまったくございませんが。まだ、インターネットで音楽が買えるなんて想像もしなかったあの頃、不便さにこそ楽しさがあったし、もっと音楽を大事に聴いていた気がするなぁ、やっぱり……。ということで、キノコホテルの最新ミニ・アルバム『マリアンヌの逆襲』。今作は、“オリジナル曲をあえて録音せず、より現代に効力を持った強力な楽曲を発掘”したカバー・アルバム。カバーとはいえ、よくある名曲リメイクの“虎の威を借る”的なカバーではなく。東京ブラボー、カルメン・マキ、泉朱子……と、普通の人は存在すら知らないアーティストの知られざる名曲ばかりで構成。しかし、そこにこそキノコホテルがカバーする意味があるし、今作を制作する意図があるのだ。
 パンク、ニューウェーブ、フリー・ジャズ、昭和歌謡など、バンドのルーツや嗜好、センスがオリジナル盤以上に強く打ち出されている今作。いかがわしくも純粋、アングラで前衛的ながら抜群にポップ。インスト・ナンバー「エレキでスイム」や「今夜はとってもいけない娘」の演奏&アレンジ、どの曲もキノコ色に染めてしまう歌声には、「やっぱり独創的なバンドだなぁ!」と震えたし、カルメン・マキ「ノイジー・ベイビー」のカバーなどは「元々、キノコホテルのために描き下された曲だったのでは?」と思うほど、カッコよく乗りこなしている。
 今作でカバーされている楽曲は’70年代前半の歌謡曲が中心で、メンバーは当然、リアルタイムで聴いていないはず。自分の趣味嗜好を掘り下げていった結果、こういう音楽たちに出会って、それが糧になっていったと思うんだけど。ネットで検索すれば、貴重盤や映像にもすぐに出会えてしまう、便利なこの時代。みんな、そういう楽しみ方ってできてるのかなぁ? と老婆心ながら思ってしまった。せっかく稼いだバイト代でクソみたいな中古盤をつかまされる経験もしながら、やっと出会ったお宝盤を擦りきれるまで聴いて、クソ盤つかんだ思い出含めて、自分の糧にする。そんな不便な時代も悪くなかったなぁと、この作品を聴きながら、改めて思いました。今作を聴いて、「ヤバい、キノコホテルの今作、私にど真ん中なんだけど!」と興味を持った人。もう一歩掘り下げて、原曲のレコードを探したりすると、もっと音楽が楽しくなりますよ。余計なお世話かもだけど、できれば中古レコード屋さんに足を運んで。ね? 

(フジジュン)

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