GRAPEVINE ALBUM「愚かな者の語ること」ディスクレビュー

愚かな者の語ること

ALBUM

GRAPEVINE

愚かな者の語ること

ポニーキャニオン

2013.04.24 release

初回限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


結成20周年 GRAPEVINEの語ること

 私が初めてGRAPEVINEの音楽を聴いたのは、それこそ1stフル・アルバム『退屈の花』だった。あの時耳に飛び込んできた屈託ない歌声とメロディ。当時の自分と重ね合わせて、何度も繰り返し聴いたのは『君を待つ間』だった。今年で結成20周年を迎える彼らの、およそ2年半ぶりとなる12thアルバム『愚かな者の語ること』は、あの頃のGRAPEVINEとは明らかに違う。まるで、久しぶりに会った幼なじみの男の子が、気付かぬ内に大人になってしまっていたようだった。低い声と横顔は少しの憂いと都会の匂いを帯びていて、私はその理由を知りたくなる。その人は口数が多い方ではないけれど、静かな微笑みを浮かべながら、ポツリポツリと語り始める。それがなんだか艶っぽくて、見惚れてしまうのだ。
 はじまりを知らせる、眩しい朝陽のようなギターの音色で幕開ける「無心の歌」。感情の中に潜む不安定さと、それを包括する愛情。激情的なメロディと歌声が、胸に潜む複雑な感情を明るみに引き出す。「コヨーテ」や「迷信」では、リズミカルなロック・テイストと遊び心ある変調で大人の余裕を香らせ、「なしくずしの愛」では、攻撃的でエロティックなリリックと込み上げるようなメロディが強引さと気だるさを感じさせる。アルバム全体に男性的でアーバンな香りが充満しており、それでいて節々に当時のあどけなさを覗かせる。そのギャップに、彼らの歩んできた道の連なりと歴史を感じることができよう。「片側一車線の夢」は、その軌跡の中で彼らが見た景色の酸いも甘いも取り込んで、吹っ切れたような爽快な一曲となっており、憂いを帯びていた表情へ希望を持たせてくれる。この楽曲が存在することで、アルバムの持つキャラクターに大きな振り幅と深みを与えているのではないか。作品を締めくくる「虎を放つ」は、深淵へと潜り込むようなサウンドで、把握しかけた彼らをまた遠くへ連れ去っていく。そうして、次に会える時まで、その人はまたどこかへ行ってしまうのだ。
 ’03年リリースの6thアルバム『イデアの水槽』以来のセルフ・プロデュースとなる今作。今の彼ららしい語り口で紡がれるロックと愛と日常を、聴いてほしい。

(小島双葉)

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