静カニ潜ム日々 ALBUM「The Present」ディスクレビュー

The Present

ALBUM

静カニ潜ム日々

The Present

RX-RECORDS/UK.PROJECT

2013.04.03 release

<CD>


今だからこそ鳴らすべき音がある

 ルーツがしっかりと感じられるバンドに興味がある。音楽は歴史なので、どんなアーティストも必ず、先人たちが作った音楽に影響されている。“その影響をどうアウトプットするか”が、そのアーティストの表現であり、オリジナリティであると思うのだ。(なので、“誰にも似ていない音楽を作りたい”という人は何か信用できない。特殊な環境で育った場合を除き、そんなことはありえないので)
 1stアルバム「The Present」で本格的なデビューを飾る3ピース・バンド“静カニ潜ム日々”のルーツは’90年代のUSインディー・ロック、特に“エモ”と呼ばれる音楽だ。Sunny Day Real Estate、Jimmy Eat World、The Get Up Kidsといったバンドに象徴されるエモは’90年代後半から’00年代序盤にかけて大流行、世界中にフォロワーを生み出した。静カニ潜ム日々の結成は’07年なので、エモのムーブメントはかなり落ち着いていたはず。しかし、だからこそ、このバンドからは「どうしても“エモ”を自分たちになりにやってみたい」という強い意志がはっきりと伝わってくるのだ。
“骨太でラウドなバンド・サウンドのなかで、叙情的なメロディを歌い上げる”というオーソドックスなスタイルを踏襲しつつ、結成から6年という時間の中で培ってきた独創性をダイレクトに伝え、現在形のエモを体現する。そう、“The Present”というタイトルが冠された本作のテーマは、まさに“今現在”のバンドの音を鳴らすことだったと思う。その成果のほどは皆さん自身の耳で確かめてほしいと思うのだが、確実に言えることは、このバンドのスタンスは極めて誠実であり、最近には珍しいほどに真っ当なロックを響かせているという事実だ。例えば「what should i say?」における強烈なエモーションを伴った音像を体感すれば、きっと“真っ当なロック”の意味を理解してもらえると思う。
『The Present』を聴いて何かを感じたのであれば、ぜひ、彼らのルーツを遡ってみてほしい。エモ、ハード・コア・パンク、北欧系といった音楽に触れることは、このバンドの音楽性をさらに深く理解する手助けになると同時に、あなた自身の音楽世界を大きく広げることに繋がるはずだ。

(森 朋之)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人