THEラブ人間 ALBUM「SONGS」ディスクレビュー

SONGS

ALBUM

THEラブ人間

SONGS

ビクターエンタテインメント

2013.04.03 release

<CD>


THEラブ人間が放つ「生きること」の賛歌

 これから訪れる春でも夏でもないどっちつかずの合間にある七分袖の季節。そんなシーズンに放たれたTHEラブ人間の2ndアルバムは、バンドの第2期を幕開ける愛と生の賛歌の連なりとなっている。これまでのTHEラブ人間のイメージからは脱皮を遂げ、より洗練されたサウンドとエモーショナルな歌声が高らかに歌い上げる「生きること」の悦びは、平熱を維持しながらも劇的にリスナーの耳へ浸透してくる。
 ゴージャスな1曲目「ラブパレードはつづく」からアッという間に彼らの新世界へ引きずり込まれ、シングル曲である3曲目「アンカーソング」では、青春時代と大人を同居させることで、バンドの軌跡を提示した。中盤の5曲目「ウミノ」からは、正に春から夏へ移ろうように、終わりから始まりを彩る爽やかな楽曲が並ぶ。作品を締めくくる10曲目「体は冷たく、心臓は燃えている」は、乱雑かつ緻密なサウンドが鼓動のように緩急を繰り返し、生々しい詞がまくし立てるように死の恐怖を叫び、そのわず僅か手前にある生の悦びを掻き立てる。このアルバムの背骨ともいうべき1曲であり、今後のTHEラブ人間を見詰める上で必聴の1曲でもある。
 「死を目の前にした時に光る生の輝き」をテーマとした今作の楽曲たちは、ボーカルである金田康平の祖父の闘病と臨終の時期(’11年12月~’12年9月)に制作された。それは必然的に死に敏感なものであり、結果的に生に敏感なものとなった。過剰なほどにパーソナルな歌詞の世界観へ強い共感を覚えてしまうのは、その根底に私たちの共通項があるからだろう。
 技術の発達と、連立するミュージシャンたちの切磋琢磨によって、完成度の高い作品というのは今の世の中割と多く生まれていたりする。それは音楽業界と我々リスナーにとって喜ばしいことではあるけれども、果たして完璧な作品こそがこのフィールドの至上であるかと問われたら、答えはノーだと私は言いたい。人が作って人が聴くというものが音楽であるなら、そこへ作り手の匂いや体温、不器用さや不完全さをどうしようもなく欲してしまう。彼らの作る音は、その欲求を満たしてくれる。そういった意味で『SONGS』は、聴き手の入り込む余剰を大いに残した作品といえよう。このアルバムは人間の体温を伴って心に触れてくる。そして、それが温かいと感じられることが、私が生きていることの確認でもあるのだ。
 生と死の合間にある七分袖の感情を、どちらへも振りきらせてくれる今作を、ぜひこの季節の内に聴いてほしい。

(小島双葉)

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