みんなの映画部 活動14『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』[前編]

みんなの映画部 活動14『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』[前編]

みんなの映画部 活動14『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』[前編]

Base Ball Bear/チャットモンチー/OKAMOTO’S

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今月は、「噛み砕きづらい作品」と評判(?)のアカデミー作品賞受賞作品を3人で観まました!

TEXT BY 森 直人(映画評論家・ライター)


活動第14回[前編]
部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)
今回観た作品:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

途中で「絶対にDVD買う!」と思った

──ただ今皆さんパンフレット熟読中でございます。今回はアカデミー賞作品賞に輝いた『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』。まずは小出部長からひと言お願いします。

小出 めっちゃ面白かったです!

福岡 あ、なんか久しぶりに聞いた、その決まり文句。

一同 (拍手)。

福岡 私もめっちゃ面白かった! 途中で「絶対にDVD買う!」と思った。

レイジ 確かに。観直したい感じですよね。

小出 一回観ただけじゃわからない細部も結構あったからね。

福岡 そう。あとこれを観たら、「自分も音楽がんばろう」という気になって。DVDで手元に持っておきたいなって思いました。

レイジ 俺、まったく予備知識なしの状態で観たんですよ。ヒーロー映画の変化球ってことで『キック・アス』みたいな内容かなと思ってたら、全然違った。

──言わば「業界もの」ですね。アメコミ・ヒーロー映画が商業主義の象徴として扱われていて、主人公はかつて『バードマン』という映画で人気ヒーローを演じたものの、今はすっかり落ち目になった中年俳優。それを実際『バットマン』の旧シリーズで主役を張ったマイケル・キートンが演じるというかぶせ方をしている。

小出 これも含めて、何重ものメタ構造になっている映画ですよね。マイケル・キートンが「俺のピークは1992年だった」って言うんだけど、『バットマン・リターンズ』がまさにこの年なんですよ。

福岡 アメコミはよくわからないんだけど、例えば『バットマン』と『スパイダーマン』の立ち位置ってどう違うの?

レイジ 会社が違いますね。『ジャンプ』と『マガジン』みたいな。

福岡 そっか。『バードマン』ってのは実際あるの?

レイジ ないです。これは架空の設定ですよね?

小出 そう、だから虚実ない交ぜというか。主人公は自分が主演するレイモンド・カーヴァー原作の文芸ものの舞台劇を企画して、ブロードウェイで返り咲きを狙っている。その裏には「今のハリウッドってヒーロー映画ばっかりじゃねえか!」っていうツッコミも張り付いている。なんかね、作品の中に渦巻いている情報とか批評的な視点が多すぎて、一点をピックアップしきれなかった。全部に反応しちゃって。

レイジ 様々な人のいろんな方向の考え方が交差している感じですよね。主人公と対決する評論家のおばさん(リンゼイ・ダンカン)も良かったし。

小出 権威ある演劇評論家ね。『ニューヨーク・タイムズ』の演劇評論って、ブロードウェイの人たちにとっては死活問題なんだって。その評価で客入りも決まっちゃうから、すごいナーバスになっちゃうみたい。

みんなアートとビジネスの狭間でずっと居場所を探してる

福岡 なんかさ、マスコミ批判する映画ってわりと多いじゃん。でもこの映画はフラットというか、役者も大変だけど評論家も自分のポリシーがあるっていう中間の立場で描いていて、そこが公平で観やすかったんだよね。

レイジ うん。どっちも言えてる、って思いますもんね。

──あと主人公の孤独や苦悩っていうのは、表現を仕事にしている映画部の皆さんにはグッとくるものがあるのでは?

小出 僕がいちばん染みたのはそこですね。やっぱりみんなアートとビジネスのバランス感というか、その狭間でずっと居場所を探してるんだなっていう。誰でもいちばん最初はプリミティヴな創作意欲とか初期衝動に従っていても、「発表したい」っていう欲求がある程度のラインにきた時点から徐々にビジネスのほうに天秤が傾いていくわけじゃない?この映画の主人公は、20年ほど前に一度商業的なピークを迎えちゃって、今でも街を歩けば「わ、バードマンだ!」って昔の役名を呼ばれてる。そこで「俺はこんなんじゃない」って、自分の原点に戻ろうとするんだけど、周りからは「芸術っぽいのやって再ブレイクを狙ってる」としか思われない。しかも同時に、「自分も認められたい」っていう世俗的な承認欲求が浮かんできちゃうんだよね。彼はその辺のつじつまが巧く合わなくて悩んでる。

レイジ めっちゃ切ないですよね。ちなみに“バードマン”っていうのはスラングで「時代遅れ」みたいな意味もあるらしいです。

福岡 そうなんや。主人公がSNSとかのインターネットにウトくて、娘(エマ・ストーン)に「お父さん、時代に取り残されてる!」って説教されるシーンとかもあるもんね。お父さんの写真を勝手に娘がサササ……ってツイートしちゃってるのが、めっちゃ若い感じがした(笑)。

小出 キャリア的には僕らはまだ10年くらい、レイジは5年とか6年の若造だけどさ、いずれは年を取るわけだから他人事じゃないんですよ(笑)。バンドやってる僕らも「人に聴いてもらってナンボ」みたいな世界にいるわけで、常にアートとビジネスの天秤の揺れの中で自分の表現を探している。これって芸術活動、文化活動をしている人たちの根幹にある永遠のメイン・テーマだよね。それを新しい形で映画にしたのが、この『バードマン』だと思う。

C-20150424-MK-1514またしても雨……というか豪雨。観賞日の悪天候率は80%以上を安定キープ。ちなみに、レイジくんが手にしている袋の中身は、『ペットセメタリー』(1989年制作)のサントラ・アナログ盤。そんなのどこでかけるのだろうか……。

後編]に続く

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