みんなの映画部 活動12『フォックスキャッチャー』[後編]

みんなの映画部 活動12『フォックスキャッチャー』[後編]

みんなの映画部 活動12『フォックスキャッチャー』[後編]

Base Ball Bear/チャットモンチー/OKAMOTO’S

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今月は、実話を基にした話題作『フォックスキャッチャー』。4人の感想は思いのほか賛否両論となりました……。

TEXT BY 森 直人(映画評論家・ライター)


活動第12回『フォックスキャッチャー』[後編]
部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー/くもゆき)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

【今回観た作品】
フォックスキャッチャー

活動第12回[前編]はこちらから

引き合っちゃったわけ。お互い報われていない者同士

小出 ただちょっと注意したいのがさ、この映画って最初はレスリング兄弟の弟のほう、マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)の話として始まるんだよね。彼の優秀なお兄ちゃん、デイヴ(マーク・ラファロ)に対するコンプレックスっていうのが、まずお話の軸として提示される。

ハマ 確かにそうですね。

小出 最初のほうのシーンでマークがお兄ちゃんとストレッチがてらに組み手をやっているんだけど、「もっと腰を入れるんだ」とか指導を受けてるうちに、マークが力任せにお兄ちゃんをバッティングしちゃう。ただの練習なのに、そんなことまでしてデイヴに勝ちたいんだね。やっぱり「超えられないお兄ちゃん」への苛立ちがすごいあって。実生活でもデイヴは真っ当な社会人というか、家族がいて、自分のレスリングで会社を回していて、人望もある。でもマークはすごい孤独で不遇で……。

──金メダル獲ってるほどの人が、すごい安い講演料をもらって、ハンバーガー屋さんに並んで。

小出 狭い自宅に帰って、インスタントみたいなヌードル食って。

ハマ そして部屋には謎のゲームボーイが(笑)。

福岡 あった、あった(笑)。

レイジ 生活描写にいちいち寂しさが出てましたね。

小出 そういう日々の不満が降り積もってすっごい鬱屈してる。そんなところにデュポンから連絡があって、引き合っちゃったわけ。お互い報われていない者同士。俺は誰からも愛されていない、もっと認められていいはずなのに、って思ってるふたりが。そこでマークがうっかりデュポンに甘えちゃったところから、皮肉な悲劇の歯車が回り出すんだよね。

ハマ マークが試合で一回戦負けして、部屋でひとり暴れるシーンがあるじゃないですか。あれはすごいシーンでしたね……自暴自棄を画に描いたような。

福岡 うん。あの俳優さん、演技力すご過ぎるよね!

小出 ちゃんとカラダを作って、本物のレスラーに見えるし。ただマークも結構極端な人なんで、まぁ正直、共感も自己投影もできないんだけど……。むしろ誰にも感情移入できない気持ち悪さが、映画として良かったなって俺は思ってるの。

気付きが短時間で得られるのが私は好き

福岡 たぶんこの事件って実際の記事だけ読んだらさ、「なんでデュポンさん、お金持ちなのに人殺しなんてしちゃったんだろう?」って思うじゃん。

小出 そうね。

福岡 せっかく恵まれた家に生まれたのに人生棒に振っちゃって、みたいな。でもこの映画を観たら、あの人が道を踏み外していく理由がちゃんとわかった。なんかさ、他人の人生の本当のところって、直接しゃべっていてもあんまりわからへんやん。でもこの映画とか観たら、共感や同情はできなくても「こういう人もおるんやな」って知ることはできる。そういう気付きが短時間で得られるのが私は好き。ちなみにマークの発言で印象深かったやつがあって。自分が獲った金メダルのことを「厳しさの勲章」とか言ってたよね。

小出 言ってた。厳しい自己鍛錬のたまもの、みたいな。彼は金メダルを獲ったけど、結局、他にいろんなものを失いすぎちゃった。そう言えば、俺がメモったやつ……(ノートを取り出す)

福岡 (覗きこんで)「マークの歩き方」って書いてる!

小出 そう(笑)。あいつの歩き方がすごかった。

福岡 脇が締まらないからね。どんだけ無理してカラダに負荷をかけてきたか……レスリング以外の人生を犠牲にしてきたかっていう生き方が、そんなとこにも出てる。

──作り込みの細やかさや、リアリティへのこだわりは本当に高精度だと思います。とはいえ今回の映画部は賛否両論でした。

レイジ でも、そういう映画はいい映画ですよね。少なくとも俺、こんなに暗い映画は久々に観ました。

ハマ デートにはおすすめできないかな(笑)。

レイジ よっぽどの映画好き同士じゃないと。

福岡 「なんかよくわからなかったね♪」とかになりそう(笑)。

小出 でもさ、だいたい説明しすぎじゃないですか、この世の中。今のわかりやすいヒット作の水準からすると、この映画は不親切に思えるかもしれないけど、そのぶんすごく考えて観られる。2回目、3回目と観たら、また最初には気付かなかった発見があるような気がしますね。

C-20150228-MK-1846「みんな映画部」取材日恒例の雨。低気圧に弱い小出部長は、終始渋い表情で「アタマイタイ、アタマイタイ」と言っていました……。

C-20150228-MK-1847喫茶店での感想会の後、小出部長とレイジくんは『劇場版 BiSキャノンボール2014』を観るべく映画館をハシゴ。その後も感想会をやりました。ただの映画好きなおにいさんたち。

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