みんなの映画部 活動12『フォックスキャッチャー』[前編]

みんなの映画部 活動12『フォックスキャッチャー』[前編]

みんなの映画部 活動12『フォックスキャッチャー』[前編]

Base Ball Bear/チャットモンチー/OKAMOTO’S

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今月は、実話を基にした話題作『フォックスキャッチャー』。4人の感想は思いのほか賛否両論となりました……。

TEXT BY 森 直人(映画評論家・ライター)


活動第12回『フォックスキャッチャー』[前編]
部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー/くもゆき)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

【今回観た作品】
フォックスキャッチャー


国を代表するお金持ちが、国の英雄を殺しちゃった

──まず小出部長から感想をひと言お願いします。

小出 僕は大好きでした。最高でした!

──ただ、今回は意見が分かれそうですね。じゃあ鑑賞中、ちょっとウトウトしていたレイジくん(笑)。

レイジ いや、この映画めっちゃ音が小さかったじゃないですか。ほぼずっとシーンと静かだったから。

ハマ BGMがほとんどなかったよね。

レイジ そう。だからこれは褒め言葉なんですけど、逆に音を付ける部分がアクセントとして活きていたなって。トロフィー室みたいなところで、めっちゃかっこいいファンキーな曲がかかっていたり。

小出 あの曲、デヴィッド・ボウイだね。「フェイム」って曲。“名声は人を殺す”って歌詞が映画の内容と示唆的に重なっている。

レイジ ちゃんと歌詞も字幕で出てきたし、狙いがハッキリしているというか、意図が正確な感じでしたね。

福岡 私は「大好き」派。映画の醍醐味っていうか、「私が思う映画ってこういうものかも」って感じた。細かいニュアンスとかも、映画館の大きなスクリーンで観ると奥行きがあってすごい良かったです。

小出 ハマは?

ハマ そうですね……単純に好き嫌いの問題なんですけど、映画のタイプとして。僕は正直、好きになれなかったですね。

一同 (笑)

ハマ いちばん決定的なのは、面白がり方の取っ掛かりがつかめなかったんですよね。映画の基になった事件のことも知らなかったので。

──その事件とは1996年、ロザンゼルス・オリンピックで金メダルを獲得したレスリング選手が、全米有数の大企業の御曹司に射殺されたというものです。

小出 国を代表するお金持ちが、国の英雄を殺しちゃったっていう。

レイジ 意味わかんないくらい強烈ですね。

ハマ だからその「ズーーーーーン」っていう異様な重さだけが圧し掛かってきた感じがして、僕としては「う~ん」って。ただパンフレットで監督(ベネット・ミラー)が「観ていて居心地が悪いと感じてくれたのはうれしい」と語っていて、やっぱりそれもちゃんと意図してるんだなって。だから作品として否定はできないんですけど。

デュポンって男を構成している虚無っていうのはすごい伝わってくる

小出 なるほどね。ベネット・ミラーって監督は元々ドキュメンタリー出身で、『カポーティ』や『マネーボール』など、事実を基にした映画を作り続けている。で、今回の主人公は実在の大財閥のドラ息子、ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)。

──デュポン社はテフロン加工の調理器具で日本でもおなじみですね。

福岡 えっ、そのデュポンなんだ!

レイジ 冒頭のテロップで、戦車なんかを作ってたって説明してましたよね?

小出 化学系の企業だから、軍事産業で第二次世界大戦中にすごいのし上がって。だからたぶん、アメリカの大財閥でいうとロックフェラーとかに近いトップレベルだよね。ただ予備知識がなくても、あのデュポンって男を構成している虚無っていうのはすごい伝わってくる。人間として完全に空洞じゃないですか。

ハマ そう、本当に空洞そのものですよ。

小出 全部からっぽで、あとは虚栄心しかない男だよね。スポーツには単なる素人なのに、金の力で優秀な選手を集めて“フォックスキャッチャー”っていう自分のレスリングチームを作って。一応コーチとしてテレビ番組の取材班のインタビューに「オリンピックを目指していきます」とか答えてるんだけど、実際は何にもしていない(笑)。あと、お母さんとの関係の話を自分でするよね。母親との関係に隔たりがあるって言いつつ、その裏返しで過剰に愛情を欲していることがにじみまくっている。

ハマ 「実は昔、友達もお母さんが金で買っていた」っていう哀しい話をしつつ、でも結局、自分も選手のことを金で買っている。

小出 そうそう。もうお金だけ有り余っちゃって、でも愛情だけは買えない。本当の繋がりがひとつもない彼の人生が、もう本当に空しくて……。あと、繰り返し「愛国心」ってことを言うじゃない。国のため、アメリカの民のために、ってさ。

ハマ あれはもう、自分の欠陥をごまかすためのすり替えですよね。

小出 うん、まさにそうだよね。

ハマ 「国のためにガチでやってるんだぞ、俺は」という建前。ただ、これは当たり前の原因と結果っていう気がするんですよ。昔、マコーレー・カルキン主演の『リッチー・リッチ』という映画があったじゃないですか。とにかくお金持ちで、家には何でも好きなものを買っていて、ジェットコースターまで持ってる。でもエンディングとしては“お金では友達は買えない”みたいな。コメディとシリアスの違いはあっても、本質は同じだなと。だからそれを改めて突きつけられても、リアル過ぎて何も言えなくなっちゃう(笑)。

C-20150227-MK-1845劇場にあった顔ハメパネルで戯れる小出部長とカメラマン・レイジ。
※写真と本編は関係ありません。

後編]へ続く

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