編み物、刺繍、羊毛フェルト……手作り魂を刺激する!究極のハンドメイドMV

TEXT BY 齋藤奈緒子

手間ヒマ惜しんだら負け! 独特の手作り感が温かい情景を生む

 冬になると、編み物やお裁縫など、様々な「手作り欲」がウズウズしてくる人も多いのでは? ミュージック・ビデオ界にも、時に「なにゆえここまで!?」と突っ込みたくなる手間ヒマだったり、ストーリーが猛烈に泣けるなど、単なる「味があってかわいい」だけじゃない、手作りものを使った傑作が存在し、観る者の手作り心を刺激したり、時にへし折ったりしてくれます。というわけで今回は、ハンドメイダー必見! 究極の手作りミュージック・ビデオをご紹介します!

腱鞘炎にご注意!? 編み物&毛糸MV

 冬と言えばやっぱり編み物! というわけで、まずは編み物・毛糸を使ったミュージック・ビデオをふたつ。このステリオグラム「ウォーキー・トーキー・マン」(2004年)は、iPodのCMにも起用されていたので聴き覚えのある方もいるのでは。このミュージック・ビデオは、スタジオの機材や楽器、それを襲う巨人までがすべて編み物で作られています。マーシャルのアンプやスピーカーの振動まで編み物で表現されているのには驚き。監督は鬼才ミシェル・ゴンドリー、編み物は彼の作品の美術監督でおなじみローリー・ファジョーニ率いるチームによってひたすら編まれました。腱鞘炎になりそう…!

 こちらも毛糸を使ったミュージック・ビデオなのですが、登場するのは編み物ではなく、毛糸をグルグルに巻いた人形。まずは観る前にハンカチをご用意ください! 英ロック・バンド、ジェイムズの「ムーヴィン・オン」(2014年)は、ベッドに横たわる、おそらくは病気の子供と、それを見守る母親の物語。くるくると踊る女の子が毛糸をひっぱると、子供の体の毛糸はだんだんほどけて消えていき、それを引き戻そうとする母親を、子供は静かに制止し……。たった1色の毛糸だからこそ感動が増す、悲しみの後に希望も残る名ビデオです。

メタラーは刺繍がお好き!?

 英へビーメタル・バンドのスローンによる「タルシス・スリープ」(2014年)は、全編がデニム生地に施した刺繍でできたミュージック・ビデオ。しかもこれ、なんとスローンのフロントマンであるニコ・リブジーが自ら制作したもの。アメリカのクラウド・ファンディング「キックスターター(Kickstarter)」で資金を募り、日本が誇るブラザーのミシン3台をフル稼働、作った刺繍は3000枚! それを1枚ずつ撮影してアニメーション化し、この宇宙を舞台にしたサイケデリックな冒険活劇が完成したというわけ。

羊毛フェルト人形の友情物語

 フェルトの原毛をひたすら針で刺すことで、毛が圧縮されて好きな形を作れる、人気の羊毛フェルト。2013年にボーカル/ギターの吉村秀樹が急逝したブラッドサースティ・ブッチャーズ(bloodthirsty butchers)が、2010年に発表した「ocean」のミュージック・ビデオは、羊毛フェルトのストップモーション・アニメを制作するユニット・ReguReguの手によるもの。病弱で海を見たことがない友達のために、男の子がひと肌脱いで真夜中の冒険に連れ出す物語で、古典絵本『おしいれのぼうけん』を彷彿とさせる夜の不気味さやとめどない想像の世界が、羊毛フェルトで鮮やかに表現されています。ブッチャーズとReguReguが組んだビデオは、もう一作「curve」(2010年)もあり、こちらの切ないラブ・ストーリーも必見です!

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