フィギュア界の事件?歌入り楽曲解禁で氷上はどう変わったのか

お気付きでしたか? こんなルール変更があったことを

毎年この時期だけテレビをつけっぱなしにしているフィギュアスケートファンです。自分よりひと回り歳下の選手が闘争心を燃やしながら激しくも優雅な演技を氷上で披露する姿を見ていると、心なしかタイピングの速度も少しだけ上がる気がします。
ある夜、画面から漏れてくる音声に耳をそばだてていると違和感が。観戦しているのはグランプリ・シリーズ中国杯の生中継のはずなのに、聴こえてきたのは壮年男性の甘美にしてダイナミックな歌声。羽生結弦選手と6分間練習中に衝突という悲劇に見舞われながら、果敢にもフリー・プログラムに挑んだエン・カン選手の演技中に流れる「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」でした。確か昨年度まではエキシビジョン・プログラムとショー以外では「歌入り楽曲」の使用は禁止されていたはず。いつの間に公式試合でもOKに?
そういえばエレーナ・ラディオノワ選手はジェニファー・ロペス、エレーネ・ゲデヴァニシビリ選手はクリスティーナ・アギレラの楽曲を起用し、その歌声にも負けない華やかかつ妖艶な演技を披露していました。これは音楽業界のすみっこで飯を食っている人間としては黙殺できない事態です。

●ラディオノワ選手が使用した「Ain’t It Funny」

●ゲデヴァニシビリ選手が使用した映画『バーレスク』の劇中音楽

ということで、シーズン真っ最中のため多忙を極めているフィギュアスケート・ライターの長谷川仁美さんに現状を伺ってみました。

ルール改定について、フィギュアスケート・ライターに聞いた

──そもそも今までなぜ公式試合では歌入りの楽曲が禁止されていたのでしょう?

長谷川 断定はできませんが、「歌詞によっては思想を煽ったりする可能性があるため」ということは考えられますね。

──なるほど。改定前はアルトゥール・ガチンスキー選手が女性の声が入ったピンク・フロイドの「虚空のスキャット」、村主章枝選手が子供の声を楽器として構成したアディエマスの「魂の歌」を使用していたので、“声”という単位では認められていたんですね。

長谷川 しかし“禁止されていた”という感覚はあまりないです。同じフィギュアでもアイスダンスでは15年以上前から歌入りの楽曲が使用可能になっていましたし、どちらかというと2年に一度の今回の大きなルール改正に伴って解禁された感じです。

──素人目線から見ると劇的な変化のように思えるのですが、実際観戦されてみて歌入り楽曲を使用している選手の割合はどうですか?

長谷川 個人的な感覚では、思ったよりは多くないかなという印象です。試合用プログラムはひとつの曲を切らずに使用するのではなく、いろんな楽曲を採用して構成するため、丸々ボーカル入りというパターンがあまりないんですよ。今シーズンは「オペラ座の怪人」を使用している選手が複数いますが、いずれも長尺な物語の内容で登場するあらゆる楽曲を取り入れていますね。

──村上大介選手がショート・プログラムで歌入りの「ロクサーヌ」を取り入れたように、今後選択肢が増えて緊迫感のなかにもまた異なった楽しみを見つけられるようになれば面白いと思うのですが。

長谷川 下位選手ではミーシャ・ジー選手がショート・プログラムで「アヴェ・マリア」、イヴァン・リギーニ選手がショート・プログラムでマイケル・ジャクソン、そしてフリー・プログラムでフランク・シナトラとポール・アンカを使用していますが、ミーシャ選手は持ち味の表現力との相乗効果で得点を上げましたし、リギーニ選手はエキシビジョン・プログラムのようにも見える自分らしいプログラムにしているので、選手によっては“表現”という面でプラスになるかもしれませんね。

●リギーニ選手がフリーで取り入れた「スリラー」と「ビリー・ジーン」

ルール改正直後のため未知数の部分も多いですが、逆に言えば可能性も計り知れないということ。12月12日〜14日の3日間に渡って地上波放送される『グランプリファイナル バルセロナ』では、これまでとは色合いの違うドラマが繰り広げられるかもしれません。
今夜もテレビつけっぱなしで視聴と原稿に励みます。

TEXT BY 町田ノイズ

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