【リリック・ビデオ後編】日本語特有の“文字という「物」”での表現方法

2014.11.22

text by ミズタタカシ

歌詞カードから、リリック・ビデオの視聴へ

音楽配信の普及にともなってCDを購入して歌詞カードをじっくり読み込むという光景は姿を消し、楽曲の世界観を深く味わいたい人々の間には、代わってYouTubeなどでのリリック・ビデオの視聴が定着しつつある。しかし、曲を聴きながら歌詞を見ることができるという手軽さだけがリリック・ビデオの魅力ではない。文字を使った映像表現の可能性が、いま多くの映像ディレクターの創造力を刺激しているのだ。

歌詞の言葉を映像のなかに組み込み音楽と同期させるという試みは、日本においてはニコニコ動画に投稿されたボカロ作品や二次創作などでおなじみ。その影響もあってか、アメリカでのブームを受けて目にする機会の増えてきた日本人アーティストのリリック・ビデオは、当初より文字のプレゼンテーションに優れたものが多い。また、リリック・ビデオと銘打たれてはいないものの、カタカナ、ひらがな、漢字と複数の表記からなり絵画的な側面も持つ日本語の特徴を活かし、文字のデザイン性を意識したユニークな作品が制作されてきた。

文字をオブジェのように配置し、歌詞のフレーズが浮かび上がる

リリック・ビデオがブームになる以前に発表されたサカナクションのアルクアラウンド。Eテレの番組に出てきそうなちょっとひねった手作り感がその特徴だ。文字をオブジェのように配置し、歌詞のフレーズが浮かび上がる思いがけない展開が楽しい。Katy PerryのBirthdayも、やはりそうした手作り感のある作品。歌詞の言葉を印象付けながらアーティストのプロモーション・ビデオとしての役割も果たすタイプの作品は、これからのリリック・ビデオの主流になりそう。

文字そのものの視覚的な可能性を拡張

タイポグラフィの面白さを追求したHaKUのeverything but the love。文字そのものの視覚的な可能性をアニメーションとして拡張していく方向性。大胆に変形するのに、なんとなく読めてしまう気がするから不思議。グラフィック作品としても秀逸だ。聴覚情報が視覚化される体験に、リリック・ビデオが新たな扉を開くかも。

文字だけでなく文字が映し出されるスクリーンの概念も広げる

リリック・ビデオとしてはスタッフやファンの写真をつなぎあわせたHold Your Handを制作しているPerfume。一方この1mmでは、映像クリエーター集団Rhizomatiksの協力のもとLEDで発光し色も変化する特殊加工の透明なアクリル板を製作。そこに浮かび上がった歌詞の文字が、近未来的なイメージを生み出している。プロジェクション・マッピングなどの最先端技術をライブや映像に積極的に取り入れていくその先で、文字だけでなく文字が映し出されるスクリーンの概念も広げ、映像表現をますます多様化させていくことが期待される。

音楽を視聴する環境の変化が生んだリリック・ビデオ。しかし、普段は楽曲のなかで音声としてしか認識されない歌詞の言葉が文字という「物」として存在することで、そのもともとの役割を超えて映像に不思議なダイナミズムを加えている。リリック・ビデオの登場で、音楽と映像の関係はこれからさらに面白いものになっていくはずだ。

→前編はこちら

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