時代をより映し出す?「お金」を歌った楽曲まとめ

2014.11.10

TEXT BY 齋藤奈緒子
PHOTO:© sakura – Fotolia.com

時代と共に映り変わる、「お金」の歌われ方

 欲の深い船頭が、寝言で「100両ほし~い! 50両でもいいよ~!」と叫ぶのは、落語の『夢金』。消費税も8%に上がり、お金が前よりサクサク消えて、寝言のひとつも言いたい人も多いのでは。これまで、お金がなくて凹んだ気分を代弁したり、笑いやドラマに代えてきたのが「音楽」です。今回は、1980年代から2010年代までの、お金をテーマにした曲を特集。音楽の中のお金は、時代と共にどう変化してきたかを探ります。

上昇志向の80年代代表、浜田省吾「MONEY」

 70年代までの音楽の中のお金は、ほぼ「貧乏」を歌ったものが大多数。ただ、“貧しさに負けた いえ世間に負けた”のフレーズで、「昭和枯れすゝき」が大ヒットした1974年は、日本が戦後の高度成長を経て、安定成長期に移行した時代。多くの人にとって貧乏は、音楽やドラマの中だけのノスタルジーになりつつありました。
 それからちょうど10年後、バブル経済に突入する直前の1984年にリリースされたのが、浜田省吾の代表曲のひとつ、「MONEY」。この曲の主人公の父は蒸発し、恋人もお金持ちの男と去っていきますが、サビで“いつか奴等の足元にBIG MONEY叩きつけてやるのさ”と宣言するのがこの曲のポイント。お金のイメージが「どうにもならない現実」ではなく、「いつか手に入れるもの」へと変化しているのがわかります。

バブル崩壊後の90年代代表、ウルフルズ「借金大王」

 90年代に入るとバブル経済が崩壊。すると今度は、お金を貸す側の立場を歌った曲が出てきます。この「借金大王」はウルフルズの1994年のシングルで、お金を貸した友人が相当のダメ人間で、自分の妹にまで手を出され、なのにそいつのことが嫌いになれない……という曲。でも“貸した金 返せよ あした金 返せよ”というサビの明るさ、なんだかんだで人情を感じるところに救いがあります。この曲は、金融マンガブームの火付け役と言われた青木雄二の『ナニワ金融道』(1990年連載開始)がドラマ化された時のエンディング・テーマにもなりました。

金はいいから話を聞け。2000年代代表、クレイジーケンバンド「タイガー&ドラゴン」

https://www.youtube.com/watch?v=US8zoKCxFO4

 2000年にはITバブルが崩壊し、2007年にはサブプライムローンとリーマンショックがきっかけで、世界同時不況に突入。そんな時代にリリースされた、クレイジーケンバンドの「タイガー&ドラゴン」(2002年)は、これまたお金を貸す側の曲。なのですが、“俺の 俺の 俺の話を聞け! 2分だけでもいい 貸した金のことなど どうでもいいから”──ただ古い友達であるお前と話したいんだ、と訴える姿は、カッコ良くもどこかやるせなさが漂います。「金のことばかり気にしてんのは男じゃねえよ」と、剣さんの背中が教えてくれるようです。

2010年代代表は、対照的な話題の2曲。KOHH「貧乏なんて気にしない」とGLAY「百花繚乱」

 そして、今を象徴するお金ソングとして挙げたいのがこの2曲。KOHHは1990年生まれ、今年夏にアルバム『MONOCHROME』をリリースした、今注目の若手ラッパーのひとり。その話題の曲が「貧乏なんて気にしない」。この曲の特徴は、“俺たちは貧乏な億万長者 笑ってる毎日”と、お金のない今の生活を肯定しているところ。でも“働いて稼いだ金を自由に使って 買いたい物を買ったら誰かにあげたい 貰ったらお返しをする ズルい損得はいらない”というささやかな願いには、30年前の「MONEY」にはなかった行き詰まり感があるような気も。
 また、今年デビュー20周年を迎えるGLAYの最新曲「百花繚乱」も、お金が歌われている曲。“東京五輪”“消費増税”など、ダイレクトな社会風刺が織り込まれ、“YAVAI!YAVAI!かなりYAVAI!”という、それアリなの!? なサビがインパクト大。何より、「持たざる者」「失った者」ばかりが歌ってきた「お金」を、GLAYほどのビッグネームが扱ったことが画期的です。お金がない若者と、地位を築いた大人、どちらにとっても先が見えなくてYAVAIもの。それが今の時代のお金観ということなのかもしれません。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人