Base Ball Bear/OKAMOTO’S
Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動“映画部”が月イチ連載に。気心知れた仲間同士でゆる~く、でもミュージシャンならではの独特な視点でガチ感想会を展開。今月は小出部長のたっての希望『ジャージー・ボーイズ』。ミュージシャンを描いた映画をミュージシャンはどう観たのか?
TEXT BY ますこかずたか(DAILY MUSIC編集部)
活動第8回[後編]
作品:『ジャージー・ボーイズ』
部員:小出祐介(Base Ball Bear)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)
ミュージカル映画って出演者がちゃんと歌ってるか歌ってないかがすごい大事
──本作はミュージカルがベースとなっていて、主人公のフランキー・ヴァリ役をはじめ、多くがミュージカルからそのまま起用されています。
ハマ 舞台で演じていた面々がいるっていうのはものすごく説得力がありますね。
小出 歌がめっちゃうまいから最初は当て振りなのかなって思ったんだけど、ちゃんと歌ってるんだよね。ミュージカル映画って出演者がちゃんと歌ってるか歌ってないかがすごい大事だから。『レ・ミゼラブル』がヒットしたのって生歌が良かったのもある。
レイジ アン・ハサウェイ歌ってるの?
小出 歌ってる。ウルヴァリンもめっちゃ歌うまいよ(笑)。
ハマ あの「奇跡のファルセット」と呼ばれたフランキー・ヴァリの物語を生歌でやるって、すごいことですよね(笑)。
小出 ハードル高すぎだよ。
ハマ 途中で入ってくるメンバーと同じように、観てる人にも「こいつスゲえ」って思わせなきゃいけないわけじゃないですか。なんだこれって俺もなったもん。
小出 なったよね。
ハマ 時代が時代だったら演じてたあの役者さんも大スターになってたぐらいのレベル(笑)。
レイジ 下手したら本家よりうまいかもしれないぐらいの。
ハマ あれはすごい。舞台俳優さんのそれなんだと思いますけど、それにしたってすごい。
小出 地肩の強さ(笑)。
「君の瞳に恋してる」を聴いたことなくても全然面白く観られる
ハマ すごく清くて、大げさな美談でもないし奇談でもない。その塩梅はほんとに素晴らしかったですね、ミュージカルと相まってない描き方だったら、もうちょっと辛気くさい感じになったんじゃないかなって。ヒットして豪遊したり派手にぶん殴りあったりそういう華やかなシーンってほとんどない。ステージがいちばん華やか。
小出 それもショービジネスの光と影の正しいあり方っていうかさ、ステージ袖で借金取りが終わるのを待ってるとかさ。それってショーを観てる人には全く関係ないし知らないしわかりえないってことなんだけど、裏ではせっぱ詰まってる。そういうモノを抱えていようがステージに上がったのならお客さんを楽しませなきゃいけないし、そういう夢を見させる世界に生きてるからっていう。
ハマ ハリウッドだと光の部分も強いし影の部分も強く描くのが王道なはずなのに、ちょうどいい。
小出 いい塩梅だったね。
ハマ こういう映画って、職種の違う友達同士で観に行こうっていう感じでもないじゃないですか。でも、「君の瞳に恋してる」を聴いたことなくても面白く観られる。結構同じ感想を持ち合える映画だと思う。
小出 そうだよなあ。
ハマ ミュージカルから流れてきているのもあるのか、歌詞が字幕で出る。それを映画でやるのは賛否両論というか、「歌詞出しちゃうの〜」っていうときもある。でも、今回は演出のひとつとして素晴らしかった。
小出 うん。今回観て思ったのは、やっぱり歌詞は出してほしいね。全然違うじゃん、歌詞があるとないとでは。「君の瞳に恋してる」を歌った時、あの出来事の後にあの歌詞を見ながら聴くと聴こえ方が変わるんだよね。
レイジ 確かに。
小出 「君の瞳に恋してる」ってスウィートでポップでキラキラしたラブ・ソングと思ってたけど、なんかあの転調でさえも変わって聴こえてくるというか。
レイジ 複雑な気持ちで歌ってたんだろうな、フランキー・ヴァリ。この顔ですよね(顔真似をしながら)。
ハマ ここからのあの顔がハンパじゃない。ほんと素晴らしい。
小出 めっちゃ良い映画。2回目観たいな。
レイジ 2回目は歌詞に泣いちゃったというよりは、サウンドっつうか、役者さんの歌や音にガッて来ちゃうみたいな瞬間があったんでよかったですねえ。2回目ぜひおすすめです。
小出 確かに、ストーリーが入ったうえで観る2回目のほうがもっと楽しそう。
今回は早めのスタートだったので、感想会は某パーラーで。見た目は映画部というよりパフェ部。
パフェの中心部を嬉々とし指してながら「セントラルドグマ」とエヴァギャグをかます小出部長。