ナオト・インティライミのMVが教えてくれる、音楽と落語の「ライブ」という共通点

text by ミズタタカシ

■噺家としての姿と、本来のミュージシャンとしての姿

ナオト・インティライミの新作、「LIFE」。MVの舞台となっているのは寄席の老舗、上野鈴本演芸場だ。

人生を上演中の舞台になぞらえたポジティブな歌詞。冒頭、思いがけない恋に自問自答する男の葛藤が、視線の向きを変えて登場人物同士の対話を表現する落語特有の「首ふり」という動作(古典芸能では所作という言葉が使われる)に重ねられる。閑散としていた客席が埋まっていくにしたがいナオト・インティライミのボルテージも上がり、やがて寄席全体がまるでライブ・ハウスのような盛り上がりに。

噺家としての姿と、本来のミュージシャンとしての姿。前半と後半でコントラストを効かせた演出が面白い。同時に、アーティストが持つカメレオンのような多面性のなかで二つの姿が違和感なく繋がり、寄席という場所のライブ性をうまく引き出したMUSIC VIDEOともなっている。

■ナオト・インティライミに所作を指導したのは、注目の噺家「春風亭一之輔」

上野鈴本演芸場を含め、都内には現在4つの寄席があり、10日間ごとに出演者を替えながら興行が打たれている。今回ナオト・インティライミに所作を指導したのも、東京の寄席で日々高座に上がる春風亭一之輔。MUSIC VIDEOには舞台袖でノリノリの前座さんとして出演しているが、実際は人気と実力を兼ね備え21人抜きで真打ちに抜擢された、いま最も注目されている噺家のひとり。「笑点」以外ではめずらしい噺家の番組として話題になったフジテレビ系「噺家が闇夜にコソコソ」など、今年になってテレビ番組への出演も増えている。

春風亭一之輔は古典落語に現代的な感覚を忍ばせるのが上手い噺家だ。雑誌「SWITCH」の企画でテイ・トウワとワークショップを開き、落語と音楽を融合させたパフォーマンスに挑戦するなど、落語の持つ可能性を拡張していくことにも意欲的。その一方で、庶民の日常に溶け込んだ寄席という空間が持つ独特のゆるさを愛する、生粋の落語っ子でもある。

■噺家の機転で様々なアレンジが加えられるのは、音楽のライブにも通じるところ

そう、寄席の魅力は何と言っても、毎日まったく違った表情を持つそのライブ性。同じ噺でも、それぞれの噺家の機転で客層や雰囲気によって様々なアレンジが加えられる。これは音楽のライブにも通じるところ。

落語なんて聴いたことがないという音楽ファンの方も、一度寄席に足を運んでみてはいかが? 料金はどこもおよそ3000円。場所によっては、その値段で昼の部から夜の部まで通して一日過ごしてしまうことだってできる。ちょっとしたフェスの気分ではないか。春風亭一之輔が出演するものはもちろん、桃月庵白酒、柳家喬太郎など、10月は若い層にまで人気のある噺家がトリを取る興行も多い。入門には最適だ。この秋、今までは気づかなかった新たなライブの魅力を発見できるかも。音楽と落語、これからのさらなるコラボレーションにも期待したい。

■都内の寄席 OFFICIAL WEBSITE
上野鈴本演芸場
新宿末廣亭
浅草演芸ホール
池袋演芸場

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