ヒャダインはなぜ支持される? 活動のベースにある対象への深い愛情

text by ミズタタカシ

ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学、でんぱ組.inc、そして数多くのアニメ作品への楽曲提供で近年活躍著しい、ヒャダインこと前山田健一。京都大学出身ミュージシャンという経歴とトーク進行の上手さから、最近はタレントとしてテレビ番組にも引っ張りだこだ。

軽快な打ち込みと転調が特徴的な、紛う方なきヒャダイン・サウンド

そんなヒャダイン、今年に入って二組のアーティストのメモリアル・シングル制作に携わっている。一枚目は、郷ひろみの実に99枚目となるシングル、その名も「99は終わらない」。

二枚目は、ゴスペラーズのデビュー20周年記念シングル、「SING!!!!!」。

軽快な打ち込みと転調が特徴的な、紛う方なきヒャダイン・サウンド。MVもポップでカラフル、これまでの郷ひろみとゴスペラーズにはあまり見られなかった演出だ。しかし、それが表面的なギミックにはとどまらず、それぞれのボーカリストとしての魅力を存分に引き出したものとなっている。そのため、従来のアーティストのファンからも非常にポジティブな反応が多い。

長く応援していればいるほど、人は自分が思い描くアーティスト像とのずれに敏感になってしまうもの。ましてや節目となる時に発表される楽曲に対しては、どうしても色眼鏡で見るようなところがあるだろう。そんななかこれらの楽曲がファンに支持されたのは、プロデューサー自身が自分たち同様アーティストの大ファンであると感じられたからではないか。

誰もが聞いたことのあるキラー・フレーズが、曲のそこかしこに散りばめられている

そんなヒャダインの思いは、作曲とともにやはり本人が手がけた歌詞にも見て取ることができる。これまでのヒットソングのタイトルや誰もが聞いたことのあるキラー・フレーズが、曲のそこかしこに散りばめられているのだ。郷ひろみの「男の子女の子」や「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」、ゴスペラーズの「永遠に」などの代表曲は、歌詞を見てみればすぐ気づくところ。さらに、たとえば「SING!!!!!」では、ブレーク前のデビューシングル「Promise」のタイトルや、アーティストが自分たちの歌手としての歩みを表現するために使ってきた「坂を上る」というイメージも盛り込まれ、熱心なファンも思わずにやりとしてしまったことだろう。

活動のベースには、常に対象への深い愛情が

このように、ヒャダインの活動のベースには、常に対象への深い愛情がある。インタビューなどで語っているように、とりわけ中高生だった90年代に聴いていたJ-POPへの思い入れは強い。フジテレビで深夜に放送されている「久保みねヒャダこじらせナイト」の名物コーナー「青春こじらせソング」では、世代の近い久保ミツロウと能町みね子と共に、その頃の楽曲の歌詞を時に斜めから面白おかしく読み解いてみせる。ここでも、90年代カルチャーへの三人の愛情が何とも言えない魅力となっている。

野宮真貴、平井堅、小室哲哉、椎名林檎など、紹介した二曲のほかにもヒャダインがプロデュースした作品には当時から第一線を走り続けている大物ミュージシャンとのコラボレーションが少なくない。そんな楽曲を聴いていると、テレビで憧れのアーティストを追っていた頃の少年ヒャダインの姿を想像してしまうのだ。

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