きゃりーとPerfumeの最新MVに潜む「オリエンタリズム」の秘密

2014.09.09

text by ミズタタカシ

多くのひとを惹きつける彼女たちのMVの魅力とは、いったいなんなのだろうか

新しいアーティストや楽曲との出会いの場といえば、ラジオやテレビの音楽番組でも、CDショップでもなく、動画サイトにアップされたMVという方が多いのではないだろうか。友達から聞いた曲を検索し、そのアーティストのMVをYouTubeで片っ端から聴いていく。いまでは当たり前の光景だ。

そんななか、新しい作品が発表される度にひと際注目を集め、群を抜いた知名度と人気を誇るのが、ともに中田ヤスタカがプロデュースするきゃりーぱみゅぱみゅとPerfumeである。これほどまでに多くのひとを惹きつける彼女たちのMVの魅力とは、いったいなんなのだろうか? 最新曲から探ってみよう。

歌川国芳の浮世絵に描かれているような大骸骨が覗き込む、バーチャルな世界

キュートな容姿と奇抜な演出で原宿発の「カワイイ」を世界にとどろかせたきゃりーぱみゅぱみゅ。最新アルバム『ピカピカふぁんたじん』でもその勢いは衰えることを知らない。

冒頭、矢に射られ幽体離脱するきゃりー。歌川国芳の浮世絵に描かれているような大骸骨が覗き込む、バーチャルな世界へと迷い込む。やがて色彩を加えながらその世界の女王となったきゃりー自身こそ最初に矢を射た人物だということがわかり、円環構造となって冒頭に戻る。

アニメーションのなかでシャーマンのような人物とともに躍動し、変身を繰り返しながら増殖さえしてしまうきゃりーの過剰な身体は、見る者に強い快感を与えてくれる。こうした、現実と虚構が入り交じりながらすべてが「カワイイ」へと集約されていくキッチュな世界観こそ、彼女のMVの特徴である。

「オリエンタル」をコンセプトに、レトロでミニアチュア的な世界観

Perfumeにとって記念すべき20枚目のシングルとなる「Cling Cling」。そのMVを見てまず目を奪われるのが、本当にこんな場所がどこかに存在しているのではないかと思ってしまうほど細部まで作り込まれた、美術の数々だ。それもそのはず、セットを手がけたのは種田陽平。あの「キルビルvol.1」を始め、数々の映画作品で独特の世界を生み出し、ジブリの最新作「思い出のマーニー」でも美術監督をつとめた人物である。

Perfumeといえば、最新技術を駆使し様々なデザインを手掛けるクリエーター集団Rhizomatiksとのコラボレーションで、デビュー以来の近未来的なイメージがここ最近さらに先鋭化している印象がある。

その一方で、「spending all my time」や、「スパイス」など、レトロな雰囲気漂うまるでミニアチュアのような世界のなかでPerfumeの三人が躍動するMVも発表してきた。今回の「Cling Cling」も、無国籍感あふれる地下マーケットに降り立った少女が万華鏡を覗き込み、Perfume演じる歌姫のステージと出会うという設定。「オリエンタル」をコンセプトに、やはりレトロでミニアチュア的な世界観を持っている。

現実でも虚構でもない、その間を自由に動き回る新しいアーティスト像

どちらのMVでも、そんな場所実際には存在しないのに、海外から見た日本やアジアの誇張されたイメージが現実よりも現実らしい説得力を持って現れてきているのがわかるだろう。そして、MVの中のそんなヴァーチャルな世界を経由することで、アーティストもまた強い存在感をまとうのである。

きゃりーとPerfumeが日本でも海外でも人々の心を掴むことができるのは、現実でも虚構でもない、その間を自由に動き回る新しいアーティスト像ゆえなのではないだろうか。PCの画面の中、彼女たちの不思議の国のアリスのような活躍を通して、私たちはこの場所ともしかしたら繋がっているかもしれない異世界の予感に浸ることができるのだ。

パリで開催されるジャパン・エキスポが毎年盛況を博し、「クール・ジャパン」と銘打たれ対外的な文化政策にまでアニメやマンガなどのポップ・カルチャーが組み込まれる。YouTubeにアップされたMVを通して日本のアーティストが世界中でダイレクトに認知されるようになって久しい。きゃりーぱみゅぱみゅとPerfumeの動画のコメント欄を見ると、そこは様々な言語で綴られたファンからの熱いメッセージで埋まっている。そうした時代の流れに沿ってか、最近のMVには海外から見た日本のイメージを取り入れたものが少なくない。そのなかで、次のきゃりーとPerfumeは一体誰になるのか、これからどんな新しい表現が生み出されていくのか、目が離せない。

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