どういう意味?板野友美がソロ・アルバムに冠した“SWAG”とは

TEXT BY 猪又 孝(DO THE MONKEY)

ヒップホップ・ライターが「SWAG」が持つ意味を解説!!

 元AKB48で、現在はソロ・アーティストとして活動している板野友美が、8月1日の名古屋ダイアモンドホールを皮切りに、台湾・香港の海外公演を含む自身初のライブ・ツアー“Tomomi Itano Live Tour〜S×W×A×G〜”を開催。そのファイナル公演を9月15日に控えたこのタイミングで、彼女が7月にリリースした初のソロ・アルバム『S×W×A×G』に改めて注目してみたい。

 アルバム・タイトルに冠された「SWAG」(スワッグ)という英単語がヒップホップ・シーンで頻繁に使われるスラングとあって、「アイドルがSWAG!?」「AKBがヒップホップ!?」「実際、中身はどうなの!?」という興味や関心を煽り、タイトルが公表された直後からネットを中心に話題を集めたこのアルバム。そもそもSWAGとは、その人のセンスや魅力を示すスラング。「アイツ、自分持ってるわ」みたいな感じで、例えば他人と違う着こなしをしていたり、イケてるスタイリングをしていたり、自信に満ちた振る舞いをしている人に使われることが多い言葉だ。

 この言葉を使った先駆けと言われるのはティーンに絶大な人気を誇るラッパー、ソウルジャ・ボーイ。彼が2009年に「Turn My Swag On」、翌2010年に「Pretty Boy Swag」をリリース。以降、じわじわ広まり、2011年に独創的なファッションでも一目置かれていた新世代ラッパーの急先鋒、エイサップ・ロッキーが「Purple Swag」を発表。そのストリートヒットで一気に拡散した印象がある。

その流れは日本のヒップホップ界にも飛び火した。同年5月に発売されたKREVAの「マカー GB-mix feat. AKLO, L-VOKAL(BETTER HALVES)」に参加したAKLOはリリックで早くもSWAGという言葉を使用。その後もKREVA、AK-69、SKY-HI、ANARCHYなど、続々とこの言葉をタイトルや歌詞に使う日本のラッパーは増え続け、昨年から今年にかけては流行語大賞ばりの人気ワードに。同時に使われ方も幅を見せるようになり、個性的なファッションとチャラいキャラで日本語ラップの寵児として注目されているKOHHは、2014年7月発表の「Fuck Swag」で、“結局見た目より中身 無理してかっこつけるのダサい”とラップ。彼のようになんでもかんでもSWAGと言う風潮や、SWAGの安売りに異を唱えるラッパーも出始めている。

「SWAG」という言葉を用いたのは、セルフ・プロデュースも始めた自分らしさの追求のため?

 板野友美のアルバムに話を戻そう。音楽誌『ワッツイン』2014年7月号のインタビューによると、本作は最近流行りのEDMや昔から好きだったヒップホップに寄せて作ったとのこと。シングル「Dear J」「1%」「ふいに」もEDM/エレクトロ調の曲だったが、後半に収録したアルバム新録曲では曲作りにイチから参加し、共同プロデュース。それら4曲ではもっと本格的なクラブ・サウンドにアプローチしていて面白い。SWAGとDELICIOUSを組み合わせた造語である「SWAGGALICIOUS」は、EDM仕上げの狂騒的なパーティー・チューンで“Put Your Hands Up!”とフロアを煽るコールも入った曲。「BOW WOW」は世界中のクラブで流行中のトラップを意識したバウンシーなナンバーで、男性を誘惑する挑発的なラップを低い声で繰り出す。ハウス寄りエレクトロ「JAN-PARAN」や、爽やかなEDMとなった「Crush」のヴァースで聴かせるラップも「アイドルが趣味でやりました」というレベルを遥かに超えるスムーズさ。発声も攻撃的だし、“アイドル・ともちん”のイメージを大きく覆す本格派仕上げだ。

 ジャケット写真に映る彼女の姿は、金ネクやグリル(金歯)でど派手に着飾るUSマナーのSWAGではないけれど、“自身のオリジナルセンス”というSWAG本来の意味でいけば、これはこれで彼女のセンスを前面に打ち出したもの。タイトルの『S×W×A×G』の頭文字には、それぞれSexy、Wonder、Attitude、Giveという意味を込めているそうだが、そうした解釈〜打ち出しも彼女流のこだわり、スタイルだ。

 かつて安室奈美恵はSUITE CHICというプロジェクトを立ち上げ、当時のR&B/ヒップホップ・サウンドにアプローチ。自らが好きな音楽性を明示し、セルフ・プロデュースも始めて自分らしさを追求し、その姿勢を支持するファンを新たに獲得して、以後の大ブレイクの足がかりを作った。彼女に憧れているという板野友美も同じ道を行けるのか。『S×W×A×G』はその起点となるかもしれない可能性を秘めた一枚だ。

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