月刊 レジーのMステ定点観測 〜第4回 8月放送分〜

月刊 レジーのMステ定点観測 〜第4回 8月放送分〜

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レジー(音楽ブロガー)

4回目を迎えた「ミュージックステーション」がテーマの当連載。8月は2度の通常放送のみ(8日、29日)とMステファンには少し寂しい1ヵ月でした。今回も出演者の中から気になったトピックを拾い上げていきたいと思います。

秦 基博、森山直太朗:実力派シンガーソングライターの立ち位置

8月8日の放送回に出演したシンガーソングライターの秦 基博。映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌でもある「ひまわりの約束」を熱唱しました。この曲、個人的には今年リリースされたJ-POPの楽曲の中でベスト級に好きです。アコースティックギターの弾き語りで淡々と始まり徐々にエモーショナルになっていく歌声、ボーカルの盛り上がりに合わせてストリングスが重なっていくバックトラック。歌唱力がない人がこれをやってしまうと「大げさで鼻につく曲」になりそうなものですが、この人の歌にそんな心配は無用。“そばにいたいよ 君のために出来ることが 僕にあるかな”というシンプルなメッセージが陳腐にならず感動的に伝わってきます。秦 基博に関して僕が気になっているのは、「実力」と「評判」のギャップ。ライブに行くと「いつまでも聴いていたい!」と思ってしまう歌を聴かせてくれるし曲だっていいのに、なぜか世間的な大ヒットに恵まれない。じゃあ玄人筋で受けがいいのかというと、意外と批評の俎上にも乗らない。根強いファンが中規模のホールをいっぱいにするくらいに付いているのはもちろん知っているしそれで十分なのかもしれないけど、もっと「国民的歌手」になってもいいのになあ。

ヒットソングというのは楽曲のクオリティはもちろんのこと、運やタイミングといった要素も重要になってきます。秦基博がこの先そういった「波」に恵まれるかは神のみぞ知るという話ですが、一方で10年以上前にそんな幸運を掴んだのが8月29日に出演していた森山直太朗。2003年に大ヒットした「さくら(独唱)」は彼を「国民的歌手」のひとりに押し上げ、この曲は今でも卒業ソングの定番として歌い継がれています。そんな森山直太朗、この日はなんと9年ぶりのMステ出演でした。確かにここ数年はチャートを賑わすような曲がなかったかも……パフォーマンスの質が落ちていたわけではなくても(僕も2008年と2011年に生で観ましたが素晴らしかったです)わかりやすいヒットには恵まれないというところに、新陳代謝の激しい音楽シーンで生き続ける難しさを感じますね。久々の出演で演奏したのは2003年のヒット曲「夏の終わり」と往年の名曲「若者たち」のカバー。次回は新しいオリジナル曲での出演を期待しています。

Kis-My-Ft2、V6:グループのオリジナリティとは

先日僕がDAILY MUSICに寄稿した「J-POP好き音楽ブロガーがやられたジャニーズソング」、読んでいただけましたか? この連載から派生して今年上期のジャニーズソングを総括していますので、良かったら目を通してみてください。さて、今月も当然のように出演していたジャニーズ事務所のグループ。8月8日に出演したKis-My-Ft2が披露した「Another Future」、個人的には嵐の曲っぽいなあという感想。舞祭組がやたらと話題になってしまった今、グループ本体としてどういう個性を作っていくのか重要なタイミングに来ているのかもしれません。8月29日にはもはや大ベテラングループになったV6が出演。この日歌った「涙のアトが消える頃」は男っぽいバラードでしたが、この手の楽曲は最近だとEXILE TRIBE系列の専売特許になりつつありますよね。少し前に西寺郷太が絡んでた時みたいな振り切った感じも今改めてやったら面白いんじゃないかなー。

ゴールデンボンバー、ゲスの極み乙女。:みんなノーマル

8月29日に出演したゴールデンボンバーとゲスの極み乙女。の2グループ。番組のトップバッターとして登場したゴールデンボンバーは、歌詞の中に鬼龍院翔の元カノの名前が盛り込まれているという反応に困る仕掛けが施された「ローラの傷だらけ」をいつもの「エア演奏」で披露しました。この曲の販売形態は「全く特典をつけないCD1種類のみ」というもの。いろいろな特典をとっぱらったらCDの売上はどうなるのかという興味深い試みだったのですが、さすがに番組内では触れてませんでしたね。

ゲスの極み乙女。は番組中盤に登場しましたが、演奏前には「今知っておくべき大注目バンド」という紹介VTRが流れました。その中で「彼らの魅力……それは、毒っ気のあるシニカルな歌詞」と出てきて、彼らの出演を楽しみにしていた日本中の少年少女が「そこか??」と突っ込んだのではないかと思います。おそらくこのバンドの魅力は、言葉の強さではなくて音そのものの気持ち良さ。披露された新曲「猟奇的なキスを私にして」も、今のロックシーンで猛威を振るっている「バスドラム四つ打ち」のアレンジを基調にしながらもテクニカルなベースや鍵盤の音によって非常にお洒落な仕上がりになっていました。
このふたつのグループには何となく共通点があるように思っていて、それは「実は結構正統派」ということです。エア演奏が注目されがちなゴールデンボンバーですが、楽曲自体は「覚えやすいメロディとハードなバンドサウンドの組み合わせ」という往年のビジュアル系をトレースした至極まっとうなもの。ゲスの極み乙女。も奇抜なバンド名やめちゃくちゃ上手い演奏に目が行ってしまいますが、曲の中に必ず「皆でシンプルに盛り上がれるポイント」を盛り込んでいます。「変わっているように見せかけて実は普通」というバランスは、「個性をアピールしたい」「でもわりと保守的」という今の音楽リスナー(というか日本の社会全般)の気分にピッタリなのではないでしょうか。鬼龍院翔と川谷絵音、それぞれのバンドのキーマンは相当策士なのでこのくらいのことは考えていてもおかしくないかなと思います。

いかがでしたか? 来月はサザンオールスターズの2週連続出演が決まっており、僕の好きなHKT48も出るようなので楽しみです。それでは、また来月よろしくお願いします。

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