楽しめればOK? 日本人として知っておきたい、音楽から見る盆踊り&音頭入門編

2014.08.09

元々、テレビもインターネットもなかった時代のエンターテイメント

 近年、祭りや盆踊りが注目を集めている。テレビドラマ・シリーズ「あまちゃん」の音楽を手がけた大友良英が旗振り役となって制作された「ええじゃないか音頭」や「あまちゃん音頭」が“現代の盆踊り唄”として話題を集めているほか、ライブハウスやクラブに足を運ぶ感覚で各地の祭り~盆踊りを訪れる若者も増加傾向にあると聞く。もちろん祭り~盆踊りと言ってもそれぞれに趣旨や背景は異なるが、元々がテレビもインターネットもなかった時代のかけがえのないエンターテイメント。そこには時代を飛び越えて人々の心を熱くするエバーグリーンな魅力があるのだろう。ここでは日本の盆踊りの音楽的魅力に迫ってみたい。

ええじゃないか音頭

現在も歌い継がれている音頭のほとんどが近代になって成立したもの

 盆踊り唄の代名詞とも言える「音頭」について簡単に説明しておこう。音頭とは本来、音頭取りと呼ばれる独唱者に続き、他の人々が同じフレーズや囃子言葉を続ける民謡の一形式。メロディを付けて教典を唱える仏教の聖歌「声明」において、最初のフレーズを独唱する人物を「音頭(おんどう)」と呼ぶが、ルーツはここだ。ただし、現在も歌い継がれている音頭のほとんどが近代になって成立したもので、「東京音頭」のように昭和に入ってからプロの作詞家・作曲家によって書き下ろされたものも多い。つまり、<古くから歌い継がれている伝統歌>と思っていた音頭が案外最近になって作られたものだった、というケースはよくあること。そうしたもののなかには囃子言葉が入らない音頭も多く、音頭を象徴する<チョチョンガチョン>という特徴的なリズムが入っていればなんでもアリ、というのが現代の音頭のあり方ではないだろうか。その意味では、冒頭で紹介した「ええじゃないか音頭」は現代にふさわしい音頭とも言える。

 音頭とは本来、時代によって新しく歌い直され、それぞれの時代に合った形で生み出されるもの。そんな「進化する音頭」を体現しているのが、大阪の河内音頭と滋賀の江州音頭だ。どちらも戦後になって大きく発展したが、その魅力のひとつが流行音楽をガンガン呑み込む貪欲さ。かつてはアルバイト情報誌「フロム・エー」のテレビCMソング「カーキン音頭」で全国的にも知られることになった河内音頭の音頭取り、河内家菊水丸がレゲエのレジェンド、ボブ・マーリーの生涯を読んだ(河内音頭は「歌う」と言わず、「読む」と言う)こちらの楽曲からは河内音頭の底力を窺い知れるはずだ。

河内家菊水丸 ボブマーレー物語

 また、滋賀県を原産地とする江州音頭は、浪曲からの影響も強い河内音頭に対し、グルーヴでグングン引っ張っていくところが最大の魅力。リズミカルに言葉を詰め込んでいくあたりはラップ的とも言えそうだ。そんな江州音頭の未来を担う若手注目株、月乃家小菊のこちらの楽曲はなんとジャマイカの伝説的エンジニア、スティーヴン・スタンレーがダブ・ミックスを担当。音頭 meets レゲエな世界にジャマイカ人もビックリ!

江州音頭 月乃家小菊

基本的には踊って楽しめばOK

 日本三大盆踊りのひとつとされている徳島の阿波おどりも実は音楽的魅力に溢れている。太鼓や鉦から構成される鳴りもののグルーヴはアフリカやブラジルのパーカッション隊にも負けないぐらい強烈! 僕も徳島でナマの阿波おどりを体験したことがあるが、夜が更けるにつれてどんどんテンションを上げていくグルーヴには鳥肌を立てっぱなしだった。日本最強の土着トランス・グルーヴ、阿波おどりの凄みを知るには、先頃リリースされたコンピレーション・アルバム『ぞめき伍 徳島高円寺阿波おどり 個性派』がオススメだ。こちらには徳島のみならず、東日本最大規模で開催されている高円寺阿波おどりのグループの演奏も収録。その迫力に圧倒されること間違いナシだ。

阿波おどり(コンピレーション・アルバムのサンプラー

 盆踊りとは本来、盆の時期に死者を供養する仏教行事。かたや祭りは五穀豊穣や豊作感謝、悪疫退散などの願いが込められているが、根底にあるのは神様を祀る神事という意味合いだ。どちらにせよ、死者や神様を喜ばすためのものという側面があり、現世の僕らも基本的には踊って楽しめばOK。そんなわけで、ライブハウスやクラブに行く感覚でガンガン盆踊りや祭りを楽しんでほしい。日本古来のエンターテイメントは今も十分魅力的だ。

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