みんなの映画部 活動05『her 世界でひとつの彼女』[前編]

みんなの映画部 活動05『her 世界でひとつの彼女』[前編]

みんなの映画部 活動05『her 世界でひとつの彼女』[前編]

Base Ball Bear/OKAMOTO’S

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間とひたらすら映画を観るプライベート課外活動“映画部”が月イチ連載に。気心知れた仲間同士でゆる~く、でもミュージシャンならではの独特な視点でガチ感想会を展開。7月は話題作が多い! ということで、小出部長とレイジくんが居残りして2本目をハシゴしました。

TEXT BY 森 直人


活動第5回[前編]
作品:『her 世界でひとつの彼女
部員:小出祐介(Base Ball Bear)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

『渇き。』を観たあとなので、かなり削られた状態での『her』なわけですが(笑)

──まずは流れの説明から先に。今回は『渇き。』に続けて2本目をハシゴしたわけです。

小出 はい。ただ、ハマくんはラジオの仕事に行きました。残ったふたりで次の映画館に。プラス、友達の……。

レイジ 僕ら界隈ではいちばん映画を観ているノザキくん。

ノザキ よろしくお願いします。

──ミュージシャン……ではない?

レイジ 完全に素人さん。

一同 (笑)

レイジ 仲間の間ではおなじみのマニアで。映画と、妖怪と、動物園。この3つの情報量がすごい。

──心強い助っ人登場ですね。では本題ということで。

小出 そもそも『渇き。』を観たあとなので、かなり削られた状態での『her』なわけですが(笑)でも、めっちゃ面白かったです!

レイジ 僕も面白かった。ほんと、うまい映画だなって。

小出 この映画って、生身の人間の男と、とにかくしゃべるだけっていう女性の人格が宿ったAI型OSの恋愛のお話だから、必然的に会話が多いでしょ。でも、そのセリフひとつひとつがすごく良くて。対人関係についてとか、孤独についてとか、人生の本質めいたものについて、突き当りまで行き届いたセリフばかりなんだよね。

レイジ ふわっとした言葉じゃなくて、具体的に刺さるセリフが考え抜かれてましたよね。

小出 そう。もう哲学的な金言がいっぱい。例えば、主人公のセオドア(ホアキン・フェニックス)って奥さんと離婚調停中の中年男なんだけど、彼が「僕はもうこれまでの人生でほとんどの感動や感情を味わってしまって、これからの人生で味わうのは、その劣化版でしかないんじゃないか?」ってモノローグするんですよ。これは相当染みたね!

レイジ 正論でフレッシュ。こんな強力なセリフが、だいぶ早い段階で出てきましたからね。

小出 しかもこの言葉って、ある程度の年齢にならないとわからないでしょ。僕も年を重ねたら、もっと染みると思う。この映画って監督がスパイク・ジョーンズだからオシャレ映画っぽいけど、実はあんまり若者向けって感じじゃない。

──確かにこれはバリバリおっさんの映画だと思いますよ(笑)。

表現ってことに関して言うと「引き算のうまさ」を感じます

小出 また、セオドアの言葉に対する、サマンサっていうOSの彼女の受け答えが素晴らしいんですよ。このふたりの声と声の会話って、身振り手振りとか肉体を介していないぶん、心からの言葉での濃いコミュニケーションになってると思うのね。僕らの日常でいうと、寝る前に今日一日あったことについて悶々と考えてたりした時に、彼女から電話かかってきて、「いや、実はこんなことがあってさ」って、暗い部屋でベッドに寝転がりながら思っていることをしゃべり始める。そしたら、自分でも思いのほか深い所まで話してしまって……みたいな、そんなシチュエーションに似てる。もしそこに嘘や誇張や演技が入っていたとしても、親密な相手に「話す」っていう行為の中で心が裸になってホロッとしちゃうとか、そういう経験ってみんなあると思うんですよ。

──いやぁ、小出部長の表情が前回とまるで違う!

一同 (笑)

レイジ やっぱり表現ってことに関して言うと「引き算のうまさ」を感じますよね。世界観自体はぶっ飛んでるじゃないですか。でも過剰さがまったくなくて、必要最低限のパーツだけで無駄なく映画を組み立てている。

ノザキ 想像力のレベルが他のありがちなSF映画とは全然違いますよね。

レイジ そう。ジャンル的には近未来SFなんだけど、全然SF感を出さずに、未来社会をリアルに感じさせるというか。ロサンゼルスの街並みも、きっと今から20年後は本当にこんなんじゃないか? って。オフィスの様子にしろスマホの機種にしろ、ちょうどいい進化具合。そんな中でレトロ感が一種のオシャレになってる感じも。

小出 だって主人公の職業が「手紙の代筆サービス」だからね。

レイジ 今、アメリカでVHSやカセットテープ、レコードが流行ってきてるじゃないですか。そういう「アナログがイケてる」っていう風潮の延長に、「手紙、逆にアツくね?」がある、みたいな。そのカルチャーの先読み具合も、さすがスパイク・ジョーンズって感じ。

小出 一方で来そうで来ないって感じもあるでしょ。そもそも数十年で人工知能があそこまで発達するってのは考えにくいし。

ノザキ あり得るかもしれない、でもないかもしれない。

小出 リアリティとフィクションの線引きがすごい絶妙だよね。ほんと、こうやって話してると、ますますいい映画に思えてくるね!

C-20140722-MK-2037今回はふたりで観賞。この前に観た『渇き。』からのショックから立ち直れるか……?C-20140722-MK-2035鑑賞後の劇場にて。写真と本編は関係ありません(笑)。

後編]に続く

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