月刊 レジーのMステ定点観測 〜第1回 5月23日&5月30日放送分〜

月刊 レジーのMステ定点観測 〜第1回 5月23日&5月30日放送分〜

『DAILY MUSIC』をご覧の皆さまはじめまして、レジーと申します。一般企業で働く傍ら音楽ブログ「レジーのブログ」を運営しており、時たま他の音楽メディアへの寄稿も行っています。この度、『月刊 レジーのMステ定点観測』という企画を始めることとなりました。

『ミュージックステーション』という超老舗音楽番組には、今をときめくJ-POPスターから海外の大物アーティスト、さらには「テレビとか興味ねーし」なんて感じの鼻っ柱の強そうなロックバンドまで、ありとあらゆるタイプのミュージシャンが出演します。「世代共通のヒット曲がなくなった」「各々が勝手に好きな曲を聴いている」と言われるようになって久しい昨今ではありますが、金曜20時のテレビ朝日においては世代・ジャンルを超えた音楽の共演が行われる素敵な空間がいまだに広がっているわけです。
そんな「メジャー音楽のるつぼ」である音楽番組を継続的にウォッチすることで、「あ、最近の日本の音楽シーンってこんな感じなのね」という空気をお伝えできればと思っています。

今回は5月後半の2回分の放送をネタに小話をいくつか。

【5月23日放送分 出演アーティスト】
flumpool「花になれ」
西野カナ「We Don’t Stop」
TOKIO「LOVE, HOLIDAY.」
KANA-BOON「フルドライブ」
AKB48「ラブラドール・レトリバー」
稲葉浩志「oh my love」

【5月30日放送分 出演アーティスト】
AKB48「あなたがいてくれたから~ラブラドール・レトリバー」
aiko「明日の歌」
椎名林檎「青春の瞬き」
嵐「誰も知らない」
コブクロ「陽だまりの道」


西野カナ、椎名林檎、aiko:それぞれの時代の「歌姫」の今

C-20140603-MK-1448

「EMIガールズにおける私の相方、宇多田ヒカル嬢が結婚しました。このやり場のない胸の高まりを、今ここで共有させていただけませんか」

5月27日に横浜で行われた椎名林檎のライブで、彼女はこんなMCの後に宇多田のヒット曲「traveling」のカバーを披露。ふたりは共に1998年に東芝EMIからデビューした“同期”なわけですが、この年はそれ以外にもMISIAやaiko、浜崎あゆみがCDデビューした“女性ボーカル当たり年”でした。当時高校2年生でまさに音楽にどっぷり浸かっていた自分にとって、この辺りの世代の人たちには多大な思い入れがあります。

そんな“98年デビュー組”の椎名林檎とaikoが共演した5月30日のMステは、僕のような三十路過ぎの音楽ファンにはたまらないものだったのではないでしょうか。「デビュー前から知ってるけどふたりで同じテレビ画面に映るのはたぶん初めて」「デビュー時にふたりでプリクラ撮った」「この前も街でばったり会った」なんていう友達トークを繰り広げた後、aikoは11枚目のアルバム『泡のような愛だった』収録の「明日の歌」を、椎名林檎はセルフ・カバー・アルバム『逆輸入 ~港湾局~』収録の「青春の輝き」(栗山千明への提供曲)を披露。“自分が歌う自分の曲”をただただ作り続けてきたaikoと、キャラクターの作り込みや他者への楽曲提供を経ながら今がいちばん自然体に見える椎名林檎。共に表現のコアに“女の情念”のようなものをすえながらも全く異なる道を歩み、今ではすっかり魅力的な大人の女性になったふたりを見てしんみりした気持ちになりました。

数多の歌姫を生んだ1998年から10年後、2008年にデビューしたのが5月23日の放送回に出演した西野カナ。“ケータイ世代のラブソング女王”というブレイク時のイメージが強く、自分向けの音楽としてとらえるのがなかなか難しいのですが、新曲の「We Don’t Stop」はラブソングというよりは働く女子の応援ソング。今はこんな感じなのかと思ったら、ドラマ『花咲舞が黙ってない』の主題歌と聞いて納得。この方、過去のインタビューでも「歌詞を書く方程式ができた」「なるべく聴いてくれる人を狭めたくない」なんて発言もしてるし、実はマーケティング的に世界観を固める方なんでしょうか。西野カナが今の椎名林檎やaikoと同じキャリアを積むのは2024年。東京オリンピックの次のオリンピックの年、彼女がどんな“女子の本音”を歌うのか興味が湧いてきました。


AKB48:楽曲にも本人にも罪はなし

C-20140603-MK-1454

2週連続で披露された「ラブラドール・レトリバー」、とても好きなんです。例年総選挙投票用の曲は“あーAKBっぽいよね”という感想しかない定型アイドルソングが多い印象ですが、今年はシルヴィ・バルタン風味のおしゃれポップス。こういう素敵な曲に“それ以外の意味”が付与されてしまったのがとても残念です。5月30日の放送には川栄李奈・入山杏奈と同じ握手レーンにいたメンバーも出演していましたが、心身の回復を最優先にしてほしいと心から思いました。


flumpool、TOKIO、KANA-BOON:「ロックバンド」の三者三様の形

C-20140603-MK-1447

5月23日の放送回には、flumpool、TOKIO、KANA-BOONという世代もタイプも異なる3つの“ロックバンド”が同時に出演。

デビュー5周年を記念したベストアルバム『The Best 2008-2014 「MONUMENT」』をリリースしたばかりのflumpoolは、番組のトップ・バッターとしてデビュー曲である「花になれ」を披露。“ミスチル直系のキャッチーな歌ものロック”のこの曲(リリース時から結構好きでした)、作者はバンドのメンバーでなくagehaspringsのコンポーザーである百田留依。「ロックバンドなのに他人の曲でデビュー」という状況には忸怩たる思いがあったことをボーカルの山村隆太が最近インタビューで語っていましたが、ベスト盤のプロモーションのためのテレビ出演で“大ヒットしたデビュー曲”としてこの曲を歌った彼らの心境やいかに。

flumpoolは以前「アイドルなのか。ロックなのか。どうでもいい。」という今考えると時代を先取りした宣伝コピーを使っていましたが、まさにこの状況を地で行っているのが最近のTOKIO。『ザ!鉄腕!DASH!!』に端を発したいじりがネット上で加速し、ついにはMステでも「本職は何ですか?」なんて失礼な質問までされる羽目に。そんな中で披露された「LOVE, HOLIDAY.」は、長瀬智也の作詞作曲によるもの。農作物だけじゃなくて音楽もちゃんと作ってます。ウルフルズも顔負けの陽気でざらざらしたロック・サウンドに乗せて放たれる決め顔や決めポーズは当たり前のようにカッコいいわけで、「ステージで魅せる」ことがロックバンドの仕事なのだとすればある意味この人たちは“最強のロックバンド”と言えるのかもしれません。

TOKIOの今年のトピックとして“初の夏フェス出演”がありますが、その夏フェスを荒らしまわる感じになりそうなのが“新世代バンド”の代表、KANA-BOON。「中毒性がある」「繰り返しの歌詞が良い」みたいなことをファンと思しき若者が発言していて、だったら“さかなさかなさかな~”でもいいんじゃないのか? とか思ったけど……それはさておき、披露された「フルドライブ」の“ゼロ年代ギター・ロックの申し子”っぽさはすごいですね。「TAIFU」「銀河」あたりのフジファブリックに連なるギターのドライブ感、ぶっきらぼうなAメロからサビでエモーショナルになる谷口鮪の歌からはアジカンのゴッチを思い出すところも。実際KANA-BOONの4人はこの辺のバンドをルーツに持っているようで、自身の快感原則に忠実に音を鳴らしてることを再確認。ちなみに、演奏終了後に司会のタモリがこらえ切れないといった感じで「ふふっ」と笑みをこぼしていたのが気になりました。小沢健二を敬愛し、『タモリ倶楽部』ではくるりやマキシマムザホルモンとも絡んでいる日本の音楽シーンの生き証人は若手注目株のパフォーマンスを見て何を思ったのでしょうか。

こんな感じで、次回は6月放送のMステについてお届けしたいと思います。
6月6日のMステもKAT-TUN、木村カエラ、きゃりーぱみゅぱみゅ、平井 堅、松本孝弘とバラエティに富んだラインナップ。「好きなアーティストが出ない……」なんて言わずに観てみると、意外な発見があるかもしれません。

第2回前編はこちら>>

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人