半田健人
30歳を目前に控え、念願かなったアルバム『せんちめんたる』を完成させた。カバー曲を外した全曲の作詞作曲をつとめ、錚々たるメンバーで制作された本作。昭和歌謡への敬愛が詰まったアルバムである。
INTERVIEW & TEXT BY 熊谷広美
PHOTOGRAPHY BY 佐野将宏
自分らしいものを、自然体で
──今回のアルバム『せんちめんたる』は、カバー曲の「階段の足音」を除いて、すべて半田さんのオリジナル曲で、歌詞もすべて書かれていらっしゃいますけど、歌詞のテーマはあったのですか?
半田健人 歌詞はこれまでも書いていたんですけど、リアリティがないというか……自分に似つかわしくない背伸びした感じがあったんですけど、去年あたりから、肩の力を抜いて、自分の気持ちとペンを取ったときの技量というのがようやくシンクロしてきた気がします。僕自身、阿久 悠先生や、なかにし礼先生などの大御所に対する尊敬、憧れがものすごく強い人間ですから、そこに迫りたい気持ちもありますけど、でも今の自分は逆立ちしても、先生たちにかなう作品は書けないはずなんですよ、経験も含めて。なのに、実際には書こうとしているという部分にどこか無理があったんでしょうね。それを一度取っ払って、自分らしいものを、自然体で、この年齢に相応しいものを書こうと。
不明瞭な部分にこそ、ロマンがある
──メロディや歌詞が、半田さんの好きな昭和歌謡の世界観も含めて、すごくロマンティックだなと感じました。
半田 今の世代というのは、イメージしにくい世代なんだと思います。“これはなんだろう?”って頭に浮かんだら、すぐにインターネットで検索できてしまうから、つねにリアルを求めてしまう。歌詞も描写がより具体的でないとわからないというか。でも僕は、そういうのがあまり好きじゃなくて、音楽は芸術であって、レポートじゃないわけだから、その不明瞭な部分にこそ、ロマンがあるんだと思います。歌詞にしても、1行、グッとくるものがあればいいと思っているんです。なかにし先生の歌詞がそうで、阿久先生の歌詞は、3分間の映画を作るような、1行1行に意味があって、技が散りばめられているんですけど、なかにし先生の歌詞は、1番のケツとか、2番の真ん中とかに、KOパンチを受けるようなものがあるんです。油断してたら、ストレートのパンチがドーンと入ってくるような。自分もそういう歌詞を書けたらいいなと思っています。自分でも愛しいと思えるような1行が書けたら、それでその歌詞はOKだと。
愛用していますから(笑)
──「ある五月」の歌詞には“回るカセット”というフレーズがあって、すごく半田さんらしいなって感じました。
半田 あれ、あざといと思われるかも知れないんですけど、今でもリアルにカセット・テープを愛用していますから(笑)。昭和っぽいものをやるから、そういうフレーズを使っていると思われたら心外で、僕の生活内ではまだカセットは生きているんです。
──では、このアルバムでリスナーにいちばん伝えたい思いとは?
半田 強いて言うならば、半田健人という俳優がいかに音楽が好きなのかが伝わればうれしいですね。アーティストの強い思いが反映された作品が、人々の心を打つと思うんです。本当に好きなことを全力でやって、思いの丈を100%表現しているので、僕の20代が詰まっている作品です。
◆今週の1曲
テーマ:宅配が40分経っても届かないときに聴きたい曲
半田健人『せんちめんたる』
半田 宣伝じゃないですけど、ぜひ僕のアルバムの曲を聴いてください。イライラしないですから。自分で自分の曲を聴く場合も、ここはこうしたほうがよかったかな? 次はこうやろう! とか考えながら聴くので、気を散らすのにはいいかなと(笑)。
リリース情報
2014.05.28 ON SALE
ALBUM『せんちめんたる』
MASHIMAN-RECORDS

[アナログ盤]¥3241+税
[CD]¥2,778+税
CONTENTS
Part.1 『せんちめんたる』前編
Part.2 『せんちめんたる』後編
Part.3 出会い
Part.4 役者としての目標
取材協力
「本格珈琲 昭和」
住所:東京都豊島区西池袋3-24-3 藤井ビルB1F
電話:03-3987-0230
営業時間:12:00〜22:00
(金・土は23時まで営業)
※水曜定休日