Base Ball Bear
Part.3 アティチュード
物語性の強かった前作『新呼吸』から一転、『二十九歳』はエンディングへ導かない、聴き手の感性に大きく委ねた作品となった。歌詞の行間や曲間を自然と楽しんでいくうちに、Base Ball Bearが届けたい思いが伝わってくるはずだ。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTOGRAPHY BY 江隈麗志
HAIR & MAKE BY 沓掛倫雄
エンディングに導かないっていうこともやりたかったこと
──これまでのようにアルバム全体を通しての物語性も作ってないって言っていいですか?
小出祐介 そうですね。物語性も途中からなくしました。最初は『新呼吸』のようにドラマのあるアルバムにしたいと思ってたんですけど、それだと答えを出すことになってしまうし、エンディングに導かないっていうこともやりたかったことなんですよね。確かに、「僕たちが考える“普通”とはこういうものです」っていう答えを出したほうがわかりやすいし、伝わりやすいし、伝達速度も早いんですよ。でも、本質はそこにはないなって。そのワンワードの答えのまわりについてる肉や装飾品って、すごく分厚いわけじゃないですか。余計なものをそぎ落とした答えが欲しい世の中だから、音楽もそうなりがちで、今の時代的だと言えばそうなんですけど、じゃあ、なんでもかんでもわかりやすいものでいいの? だけどさ〜っていう感じなんですよ。
──夢と現実とか、今の時代を生きる自分というテーマ性がないわけではないですもんね。
小出 もちろん、それは踏まえているんですよ。それを歌ってないわけではなく、行間にしている。歌ってないことを歌っているっていう技法というか、アティチュードですよね。直接的な表現だけが表現ではないし、言っていることと言っていることの間に忍ばせることでしか伝えらないこともあると思う。
湯浅将平 アルバム全体を通して、歌詞の行間を読むっていうのはすごく大事なことですよね。書いてないけど、その間を自分なりに考えたり、受け止めるっていう。言葉だけじゃなく、曲間とか、フェイドインしてくる瞬間とか、音がないところもスキップしないで聴いて欲しいんですよね。僕が昔好きで聴いていたアルバムも、何回も同じCDを聴いて、その“間”も楽しんで、そこで自分なりに何かを感じながら聴いてたので。
堀之内大介 1曲目から16曲目まで流れで聴いて、これがひとつの作品ですよって感じて欲しいですよね。この曲数がどう評価されるのかは、リリースしてみたいとわからないところがあるけど、俺らはアルバムはこういうもんだよって思っているから。
バンドの何かを変えてやろうっていう気概を感じると好きになる
関根史織 バンドのモードがすごく良かったんですよね。最近、ロック・バンドのアルバムにはドキュメント的なところがあるなって思ってて。昔は作品性のあるアルバムが好きだったんですけど、バンドを長くやるにつれて、そのときのバンドのモードが色濃く詰まっているほうがいいアルバムだなって思うようになって。世間的に駄作と呼ばれるようなアルバムだったとしても、バンドの何かを変えてやろうっていう気概を感じると好きになったりするんですよね。そういう意味では、このアルバムには、Base Ball Bearの今のモードが色濃く出ているなって思いますね。
小出 今の時代の奔流というものがあるとするならば、ぼくらは常にカウンターであるっていのが、意外といちばん自分たちらしいかなって思いますね。
- Part.01 Base Ball Bear – 前作から3年間、考え続けてきたことが実を結んだ新作!
- Part.02 Base Ball Bear – 今作の制作で見えてきた、ベボベのスタンスとはいったい!?
- Part.03 Base Ball Bear – 歌ってないことを歌っている!? “間”の楽しみとは?
- Part.04 Base Ball Bear – オマージュあり、天才的な発想あり、など自信作が勢揃い!
- Part.05 Base Ball Bear – 16歳から29歳になっても変わらないバンドの楽しさ
リリース情報
2014.06.04 ON SALE
ALBUM『二十九歳』
EMI Records

【写真:初回限定盤CD+DVD】¥3,500+税
【通常盤CD】¥2,931+税