アナ雪ってどうしてこんなにヒットしたの?終わらないニュースを生み出すアナ雪の秘密

2014.05.25

TEXT BY 高野修平

「アナと雪の女王」の勢いが止まらない。大ヒット中のディズニー映画「アナと雪の女王」が18日の段階で、累計興行収入185億2000万円を突破し、日本歴代興行成績ランキングで、「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(173.5億円)、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(173億円)を超えて、6位に浮上した。累計動員数も1459万人に達している。サウンドトラックも累計57万5千枚(5/26付)を突破し、大ヒットとなっている。

ここまでの大ヒットになぜ、「アナと雪の女王」は辿りつけたのだろうか。果たして偶然の産物なのだろうか。それとも戦略的な狙いがあったのだろうか。

語られる主語が逆転されている

一般的に映画が語られる場合は当然ながら映画の文脈が軸となる。「アメイジング・スパイダーマン2」で言えば、「アメイジング・スパイダーマン2」について人々は語る。「テルマエ・ロマエII」であれば、それもやはり「テルマエ・ロマエII」の文脈を多くの人は語るわけである。

そこで、「アメイジング・スパイダーマン」の主題歌について多くを語る人は決して多くはない。(もちろん、ゼロではない)しかし、「アナと雪の女王」で考えてみた場合、不思議なことが起きている。語られる主語が逆転しているのである。

本来語られる文脈が映画である以上、映画が当たり前だが、主語になるべきだ。しかし、実際は「アナと雪の女王」の「Let It Go」ではなく、「Let It Go」の「アナと雪の女王」だった。

予告編では(いくつかパターンはあるが)主題歌である「Let It Go」を全面に打ち出しているし、映画のオフィシャルサイトを見てみても、「Let It Go」が強く打ち出されている。つまり、映画「アナと雪の女王」は当初から全方位的に「Let It Go」の音楽文脈でマーケティングを実施していると考えることができるのだ。

今でこそマスメディア、ソーシャルメディア上では「アナと雪の女王」も「Let It Go」も同列に語られることも多い。

しかし、ことの始まりは「アナと雪の女王」ではなく、音楽の「Let It Go」を主軸とした戦略から『アナ雪現象』や『レリゴー現象』は始まったといえる。

さて、今回の「アナと雪の女王」の盛り上がりは、まさに今の時代らしい新たな波が起こすこととなった。それが二次創作である。YouTubeやニコニコ動画を中心に、替え歌やミュージカルを口パクで完全再現するものや、「Let It Go 歌いながら徐々に全裸になるの楽しすぎワロタwwwww」、コスプレ、イラストなどソーシャルメディアを起点として、話題が作られていく。

そして、「Let It Go」が話題になればなるほど、比例してニュースが次々と生まれていく。それが「終わらないニュース」だ。

世の中の空気を作る「終わらないニュース」

「終わらないニュース」とは、PRからのニュースが各メディアを通して連続して起こることであり、かつその内容は主題を維持しながらも、多面的な内容が展開されることだ。

「アナと雪の女王」で言えば、映画自体のニュース、興行収入のニュース、ソーシャルメディア上での「歌ってみた」や替え歌、歴代興行収入を超えるか? といったニュースが止めどなく流れている。

「最近、アナと雪の女王のニュースよく見るなあ。そんなに人気なのか?」
「Let It Goがいたるところで聴こえる。そんなに流行ってるんだ」
「レリゴー!レリゴー!とわが子が歌ってる!」

上記のようなニュースや会話が日々の生活の中で活性化していくと、「さすがにこれは見たほうがいいのではないか」という空気が世の中を形作っていく。

この空気こそがブームやムーブメントを起こす際に重要になる。
その中でポイントとなるのが、「終わらないニュース」なのである。

さらにリアルのイベントがその流れに拍車をかける。「アナと雪の女王」のシング・アロング版公開を記念したイベント<みんなで歌おう! 「アナと雪の女王」>が東京・江東区のディファ有明で開催。北海道から沖縄まで約5000人の応募者の中から当選した約600人が参加したというニュースも発生、この映画館で歌おうという企画を知らない鑑賞者がクレームをつけるなど、肯定/否定を含めたニュースが終わらない。現に今もほぼ毎日「アナと雪の女王」に関するニュースは発信されている。

「アナと雪の女王」がブームになった秘密

改めて、冒頭に戻ろう。
「アナと雪の女王」はなぜ、ここまで大ヒットしたのだろうか。

それは「Let It Go」が非常に優れた楽曲であることが原点であること。人が語りたくなる音楽、真似したくなる音楽が根底にあるうえで、音楽を戦略的に解放し(こういった二次創作は未だに削除されてしまうケースは多い)マーケティング戦略を音楽文脈である「Let It Go」に振り切ったからこそ実現できたといえるのではないだろうか。

その結果、音楽文脈中心のマーケティングだったのにも関わらず、音楽以外の様々な文脈のニュースが生まれ、世の中に空気が出来ていく。それは音楽ファンに限らず、ディズニーファンは当然のことながら、映画ファン、主婦層、学校、職場など、どこもかしこもで語られる。そしてリアルで、テレビなどのマスメディアで、ソーシャルメディアでニュースが止めどなく発信されることで、「終わらないニュース」になる。

「終わらないニュース」や二次創作の重要性は、ブームやトレンド、ムーヴメントを形成するうえでは不可欠だ。「アナと雪の女王」はまさにこれを実現したからこそ、誰に話しても知っている状態である「世の中ゴト化」を成し得たと考えられる。

「アナと雪の女王」は音楽を軸にしたマーケティングと「終わらないニュース」、そこに映画そのもののチカラと、時代をとらえたインサイトの合体によって、大ヒットを成し遂げたといえるのではないだろうか。

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