月収○○万で230万円の楽器を購入……とあるミュージシャンの実話

2014.05.24

5万円の中古車に230万円の楽器を乗せて活動

「弘法筆を選ばず」などと言うが、音楽の場合、やはり質のいい楽器が奏者には好まれる。

楽器の“質”は一般の人が思っている以上に幅があり、当然、値段もピンキリである。ギターやベースといったお馴染みの楽器も、1万円台で買えるものから100万円を大きく越えるものまで様々だ。

また一部、例外はあるものの、基本的に楽器は値段に正直だと言われている。故に、「違いのわかる」ミュージシャンの多くは大枚をはたいて高い楽器を買い求めるのである。もちろんお金持ちのミュージシャンならなんの問題もないが、中には生活費を切り詰めて、さらに重〜い借金を背負ってまで超高額な楽器を購入する貧乏ミュージシャンもいる。

神奈川県内の家賃6万円のアパートに住んでいる駆け出しのジャズ・ベーシストT君(26歳)は、昨年末、思い切って約230万円するウッドベースを購入した。それまで使用していた楽器は、学生時代から使っていた40万円のもの(これも十分高額だが)だったが、本人曰く「必要経費であり、自分への投資」ということで決断に踏み切ったという。

「商売道具ですから、それにお金をかけるのは当たり前です」

ちなみにT君の収入は、都内某所で定期的に入る生演奏の仕事(いわゆる箱バン)がメイン。その他に、単発的なパーティやイベントでの演奏のギャランティ、さらにライブでのわずかな売上金もあるが、月収は手取りで20万円弱。そんな経済状況で、230万円もするウッドベースを買ったT君。大丈夫なのか?

「商売道具ですから、それにお金をかけるのは当たり前ですし、楽器を買い替えた途端、ミュージシャン仲間からも上手くなったと専らの評判です。実際、普通に音を出すだけで“高級”な音色がするんですから。一応、学生時代から昨年の夏くらいまでバイトで貯めた金もあったので頭金として100万支払っています。月々、4万ずつ払っているので利子分含めてもたった3年で支払い終わりますね。もちろんこの楽器にしたことで、もっと仕事も増えるはずですから、その分、収入にも跳ね返ってくる。となれば、借金返済はもっと前倒しできるでしょうねぇ。え、楽観的? いや、これくらい攻めの気持ちがないと、ミュージシャンなってやってらんないすよ!」(T君)

食費や遊興費を削りつつ、毎日、楽器が上達するよう練習と本番を繰り返しているというT君。ちなみに仕事場に向かう際は、知人から5万円で買った中古のバンに愛器を大事に入れて、安全運転で車を走らせるのだとか。5万円の車に230万円の楽器というのもスゴイ話だ……。

駆け出しの若手ミュージシャンの中には、彼のような「大胆な自己投資」をしている人は少なくない。一般の我々から見れば、彼らは無謀で危険な“賭け”をしているように映るかもしれない。しかし、彼らはそこに全てを賭けている。

音楽で楽に食えるようになったら何を買いたいのか……最後にT君に聞いた。

「やっぱりもっといい楽器ですかねぇ。機材も揃えたいですし、そうなるといくらお金があっても足りませんよ(苦笑)」

お、おう……。

PHOTOGRAPHY BY Atsushi Tadokoro

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