フジテレビ「ノイタミナ」10年の傑作

フジテレビ「ノイタミナ」10年の傑作

少々気の早い話なのかもしれないが、TVアニメ「ピンポン」はいわゆる“深夜アニメ枠”にあってもそのセオリーにのっとらず、より広い視聴者層に向けた作品として、大成功を収めたのではないか。フジテレビが10年の歳月をかけ積み上げてきた「ノイタミナ」ブランドを象徴する名作として、きっと長く語り継がれるに違いないだろう。

松本大洋のマンガ「ピンポン」は、単行本のヒットに加え2002年に窪塚洋介主演で実写映画化されたこともあり、すでに多くの人々に楽しまれてきた作品だ。12年を経ての予想外のアニメ化ではそれらの原作ストーリーを軸にあらたな演出やエピソードが追加され、登場人物たちの心情や背景にさらなる深みを加えることに成功している。

そして音楽まわりのスタッフィングもまた、既存ファンを唸らせるものだった。劇伴制作のクレジットにはソロ・ユニットagraphを主宰する牛尾憲輔。彼は石野卓球や電気グルーヴのライブ・サポートを務めている人物で、一方で元SUPERCARの中村弘二、フルカワミキらとLAMAを結成するなど多彩な活動を展開しているアーティストだ。映画「ピンポン」の劇伴には石野卓球が参加しており、主題歌はSUPERCAR「Yumegiwa Last Boy」。この“イズム”を継承したキャスティングと、実際にアニメを彩るニューオーダー色たっぷりな音楽には自然と拍手を贈ってしまう。

さらにメレンゲが担当したEDテーマ「僕らについて」にもSUPERCAR「Yumegiwa Last Boy」をリスペクトした形跡が見られ興味深い。イントロやAメロを聴いてニヤリとした人は多いのではないだろうか。爆弾ジョニーのOPテーマ「唯一人」における青さ溢れるバカヤロウなロック感もまた、「青春」と「才能」をテーマに「現実」が重くのしかかる作品のテーマをよく言い当てている。

どこまでも丁寧に原作に寄り添いながら、新しい要素を加えることを恐れない……「ピンポン」チームのクリエイター魂には感服だ。物語はすでに半ばだが、今からでも遅くない。読者のみなさんにもぜひ、この名作を眼で耳で体験してほしい。

TEXT BY 西原史顕(リスアニ!)

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