『凪のあすから』が深読みできすぎてツライ……

『凪のあすから』が深読みできすぎてツライ……

アニメ作品と音楽の関係性を追求するメディア「リスアニ!」がこのようなコラム・スペースをいただいたからには、アニメ主題歌に込められた音楽家たちの心根を深読みするヒントを、DAILY MUSIC読者の皆さんにもわかりやすく提示していきたいと思います。

というわけで今回紹介するのは、2013年10月に放送がスタートし2014年1月現在も放送中のアニメ『凪のあすから』主題歌。本アニメは海底の小さな村・汐鹿生(しおししお)と陸の小さな街・鷲大師(おしおおし)を舞台に、海中に住む少年少女たちと陸に住む少年少女たちとの青春を描いたファンタジー。“エナ”と呼ばれる特殊な皮膚を持ち海と陸を往来できる海の人々と、普通の人間である陸の人々との人間模様が描かれています。

そんなアニメのオープニング・テーマとエンディング・テーマを彩るのがRayの「lull ~そして僕らは~」(前期オープニング・テーマ)「ebb and flow」(後期オープニング・テーマ)と、やなぎなぎの「アクアテラリウム」(前期エンディング・テーマ)「三つ葉の結びめ」(後期エンディング・テーマ)。いずれもミドルバラードで、アニメ作品全体に漂う切なさを見事に醸しつつ、歌詞も作品世界のプロットを凝縮したワードが選ばれています。特に歌詞は作中の男女の恋模様を淡くなぞりながら、裏側に潜む様々な神話的モチーフをも暗示しています。

この作品には信仰や神事に繋がる“巴日”という特異日があり、また“おふねひき”という、人魚伝説を彷彿とさせる不漁や嵐などの滅びを連想させる祭りが存在します。例えば「三つ葉の結びめ」という言葉には、これらの神事が分解され置換された形跡が残っているように思えます。ある声優アーティストがアニメ主題歌を「人生そのもの」と評していましたが、まさに“作中に生きる人々”の、社会的背景までをも表現しているのです。

異邦人=異教徒との交わりを禁忌とした物語は古来より世界中で語られてきましたが、本アニメも物語前半では異種の交わりが生む悲劇に抗う人々が、後半では“5年間の冬眠”でより鮮明に“人ならざるもの”となった海の人々と陸に取り残されてしまった人々との境界線が描かれています。

アニメ主題歌の楽しさは、音楽に加え物語というもうひとつの要素によって、より大きな解釈の可能性を構築できる点にあります。そしてアニメ主題歌を生み出しているクリエイターたちは、その余白を意図的に広げる術を知っています。ゆえに受け手は自由な想像を膨らませることができるわけで、これこそ物語エンターテインメントの真髄であり、映像と音楽、言葉が織りなす総合芸術そのものなのです。ぜひ『凪のあすから』関連作品を、観て聴いて楽しんでいただければと思います。

TEXT BY 西原史顕(リスアニ!)

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