アーティストが公開中のホラー映画を観て「俺にとってのスター・ウォーズ!」と絶賛!【みんなの映画部】

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は、小出部長が「俺にとってのスター・ウォーズ」と声を上げたJホラーの傑作。ミュージシャン枠を超えてこの界隈におけるトップクラスの語り手となりつつある小出部長が、あなたを素晴らしきホラー映画の世界へご案内します!


活動第23回[前編]「残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋‐
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)

貞子みたいなのが出てくると期待したというのは十中八九あると思います

──2016年、最初の「みんなの映画部」です。新春一発目は去年(第11回「新年会スペシャル」)に引き続き、小出部長の“ホラハラ”(ホラーハラスメント)で始まりました。

オカモトレイジ (小出部長のぎっしりしたメモ書きを見て)そのメモがホラハラ。

福岡晃子 やばいね~(笑)。

小出祐介 今回は劇場公開されたばかりの「残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋‐」です。まずは皆さんいかがでしたか、映画として。

レイジ もうちょっと、怖いキャラが欲しかったなと思いました。

小出 まあ、そうでしょうね。

一同 (笑)。

小出 わかりますよ、それ。一般のホラーユーザーの方が、まず貞子みたいな大玉期待するだろうなというのは、十中八九あると思ってます。

ハマ・オカモト はい!(挙手して)

小出 どうぞ!(指差して)

ハマ 逆に、わかりやすく怖いヤツみたいなものがもっと出てこなくてもいいと思いました。僕はこの映画のニュアンス勝負、すごく好きでした。もっと大味の怖いものが来てほしかったとは思わなかったです。

小出 むしろもっと少なくて良かった、と。

ハマ 物語の組み立て方のほうが面白かったので、もはや怖いものがなんなのかは二の次でいいというか。

小出 そういうハマくんタイプの人は、原作小説もおすすめします。

──映画は原作よりもかなり整理されていましたね。

小出 ですね。説明してしまったらダレそうな情報の処理も自然で上手かったですよね。あっこはどうでしたか?

福岡 めっちゃ構えて観てたわりにはソフトだった。けど去年のホラハラ会、あれをやっていて良かった。あれでホラー映画について免疫がついたというか、見方が面白くなった。

小出 それはありがたいかぎりです。「残穢」はまったくその文脈上にある映画だから。

レイジ “ザ・Jホラー”って感じでしたね。

小出 ホントそうなんですよ。ハイコンテクストであればあるほど楽しめる1本だと思います。つまり自分のなかにJホラー文脈に則ったリテラシーがあると、より立体的に楽しめるので。それを補足するために資料を持ってきました。(バッグから書籍を取り出す)

一同 (どよめいて)すごーい!

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持ってきた資料文献を取り出して何事もなかったように語りだす小出部長の姿に、ミュージシャンであることを一瞬忘れます。

竹内結子さんが演じている主人公は、原作者の小野不由美さんがモデルなんです

レイジ あっ、これは世界で小出祐介しか読んでいないかもしれない雑誌じゃないですか!

福岡 なにそれ!

小出 怪談専門誌「幽」です。

レイジ 初めて見た!(笑)

小出 いくつか説明しますと、まず「残穢」原作の前フリになっているのが、「鬼談百景」という作品です。

元々は「鬼談草紙」というタイトルで「幽」で連載されていたんですが、単行本になる際に「鬼談百景」というタイトルになりました。木原浩勝・中山市朗「新耳袋」に代表されるような、いわゆる百物語スタイルの現代実話怪談短編集ですね。

ハマ 映画の主人公も同じような連載を持っている小説家という設定でしたよね。

小出 そう、竹内結子さんが演じている主人公は、原作者の小野不由美さんがモデルなんです。映画では若干設定が変わっているんですけど、小野さんは1988年にライトノベル系の少女小説レーベルでデビューして、そこで、「悪霊なんかこわくない」に始まる「悪霊シリーズ」という、少女小説とホラーを掛け合わせた作品を発表し始めるんですね。

で、そのあとがきで“あなたの身の回りの怖い話”を読者から募っていたんですけど、当時はまだそれを発表する土壌がなかった。でも、それから15年の間に、「新耳袋」「『超』怖い話」などのシリーズによって実話怪談の土壌が耕され、「幽」という雑誌もできた。

そこで小野さんも、“今だったら読者から募ったあの怖い話たちを発表できるぞ”となって、「鬼談草紙」が始まるわけです。ちなみに、「残穢」原作の冒頭は、ここまで話したこととほとんど同じことを“私”が語るところから始まります(笑)。で、僕は当時読んでいたんですよ。

ハマ 出た当時からですか?

小出 当時から。 2004年だから20歳ぐらいのときかな。

──じゃあ、Base Ball Bearのデビュー前。

小出 はい。「あっ、小野さんがこういうのを始めたんだ」と思って、ずっと読んでいたんです。「幽」は半年に1回しか出ないんです。しかも分量もあるので結構読むのに時間がかかるわけ。

コツコツずっと読んでいたんだけど、連載の最終回を迎えるときに、連載をまとめた単行本「鬼談百景」と、書き下ろしの「残穢」っていう単行本が同時刊行されますとアナウンスが出たんです。それで「残穢」を読んだらびっくりして。俺がずっと読んでいた連載が「残穢」の仕掛けでしかなかったから。

ハマ なるほど。

小出 「残穢」という小説は、事件のルポルタージュのような書き方になっていて、実名で出てくる人も多いんですよ。例えば、映画では名前を変えていたけど、調査の協力者として登場する、平山夢明さんとか福澤徹三さん。

このおふたりも実話怪談の代表的な作家さんです。他にも、実際のJホラー作品を用いての考察や、時事的な話題も出てくる。だけど、どこまでが本当で、どこまでがフィクションなのかはわからない。小野さんもそこに関しては一切明かしていないんですね。

一同 (ひたすらうなずきながら拝聴)

小出 つまり「残穢」は、フェイクドキュメンタリーホラー小説なんです。

 

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学生時代からホラー小説文脈に触れてきた身として、2016年のホラー映画ムーブメントの尖兵となった「残穢」を観終わり、「これぞ、俺にとってのスター・ウォーズ」と高ぶる小出部長でありました。

小出部長がさらに熱量を増す狂気の[後編]は2月4日(木)配信!

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