犯罪、ヤクザ、暴力……川崎の工場地帯の町、そのリアルをラップする「BAD HOP」

2015.12.14

ヒップホップには、ストリートでの犯罪を題材にした「ギャングスタラップ」というジャンルがある。多くのギャングスタラッパーは“悪そうな奴は大体友達”であることを活かし、犯罪エピソードを拝借したり膨らませたりしてリリックにすることが多い。

そんななか、神奈川県川崎市に、自分たちの体験談だけを元にしてリアルなギャングスタラップを生み出している若者たちがいる。今回は、元不良たちのみで構成されたヒップホップクルー「BAD HOP」を紹介しよう。

 

貧困と犯罪がすぐそこにある地元


BAD HOPは、T-Pablow、YZERR、Tiji Jojo、Benjazzy、Yellow Pato、AKDOW、Bark、G-K.I.D、Vingoの9人組のヒップホップクルーだ。

彼らの地元は、神奈川県内でも治安が良くないと語る人の多い川崎市池上町。隣接する工場地帯から出るトラックの排気ガスと工場から出る煙にまみれ、町内にはバラックやブルーシートハウスが乱立した場所も存在する。

そんな池上町で育ったメンバーたちにとって危険は隣り合わせ。地元では、学校内で警察による集団検挙が行われるほど、若者による犯罪が頻発していた。BAD HOPのメンバーも、全員が地元で名の知れた元不良。学生時代にはたくさんの事件を起こしてきたという。

店員不在のレジを狙った強盗を繰り返し、ある時に店主にバットで返り討ちにあって顔面が血だらけになった経験を持つメンバーもいる。同世代のかつての仲間は薬物中毒者や服役囚になってしまったが、BAD HOPのメンバーたちは音楽との出会いによって更生を果たした。

そして犯罪や暴力が頻発する地元から抜け出すため、現在は音楽での成功を目指し、活動している。

 

クルーを引っ張るのは高校生ラップ選手権の王者


BADHOPの名は、メンバーのT-Pablowの活躍によって全国的に知られるようになった。

中学生時代に川崎の不良グループ200人のリーダーであったT-Pablowは、2012年にK-九の名義で「第1回 BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」に出場し、優勝。

優勝後は地元の不良たちと縁を切るために1年半の間、全国を放浪した。そしてT-Pablowと名前を改め、2013年の「第4回 BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」で再び優勝し、全国にその名を轟かせた。

現在は、Zeebraの運営するレーベル「GRAND MASTER」に所属。双子の弟のYZERRとユニット「2WIN」の活動を通して、BAD HOPの名を全国に広めている。

 

2015年、ついに1stアルバムをリリース


BADHOPは、2015年7月に満を持して1stアルバム『BAD HOP』をリリースした。

“問題ならずっと変わらないよカネ絡み 母子家庭、家に押しかけて怒鳴り散らしているヤクザのとりたて 祈ったよいつか終りがくるかな 気づいたら俺がとりてる側”

アルバム収録曲「Liberty」のミュージックビデオでは、暗闇で光る工場地帯の煙突をバッグに、家庭とストリートでの不遇な体験と、そこから抜け出すために仲間たちとヒップホップで成功する決意をラップしている。

アルバムの中には、他にも地元や過去の自分と向き合った内容の楽曲が数多く収録されており、BAD HOPのメンバーの半生が詰まった一枚に仕上がっている。

 

BAD HOPは日本語ラップシーンを担っていくことを期待されている若手クルー。これからの彼らの活動から目が離せない。

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