若い世代にはカート・コバーンを知らない人が多いのだろうか。90年代にグランジブームを巻き起こしたロックバンド、ニルヴァーナ。カート・コバーンは、ニルヴァーナのフロントマンであり、1994年に猟銃自殺でこの世を去ったロックの歴史に残るカリスマだ。
2015年でカート・コバーンが亡くなってから21年。死後でも話題になるのがカリスマと呼ばれる者の宿命である。だが今年はメディアを賑わせるカート・コバーンにまつわる話が、あまりにも連発され過ぎていると話題だ。
今回はその中から、特に注目を集めたものを3つ紹介しよう。
実の娘も製作に参加した完全公認のドキュメンタリー
まずは、6月に世界中で公開されたドキュメンタリー映画「COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック」。
この作品はこれまでのカート・コバーンやニルヴァーナの映像ドキュメンタリーとはひと味違い、なんとカート・コバーンの実の娘であるフランシス・ビーン・コバーンが製作総指揮を務めている初の遺族公認の作品だ。
妻コートニー・ラブや父ドン・コバーンのレアなインタビューや、初公開となる家族所有の資料で構成された、ファン待望のカート・コバーンドキュメンタリーの決定版なのだ。
カートは自殺ではない! 妻による他殺説を検証するドキュメンタリードラマ
そんな非の打ちどころのない公式ドキュメンタリーが公開される一方、「カート・コバーン他殺説」を大胆にも検証する映像作品も公開された。
12月12日に日本で公開がスタートする「ソークト・イン・ブリーチ 〜カート・コバーン 死の疑惑〜」は、コバーンの死の直前に妻コートニー・ラブに雇われた私立探偵トム・グラントを主人公にしたドキュメンタリードラマ。
トムが20年にわたる独自調査の末にたどり着いた「コートニーがカートを殺した」という仮説を、関係者へのインタビューや事件前後のコートニーの録音音声を駆使して、多角的に検証していくという内容になっている。
もちろんコートニーは上映の中止を要請したが、一部タイトルやキャッチコピーが変更されたのみで、内容はそのままに上映された話題作である。
伝説のライブで着用していたボロいカーディガンがオークションに出品
同じ年にひとりのミュージシャンのドキュメンタリーが2本公開されることは極めて珍しい。しかし今年のカート・コバーンの勢いはまだ止まらない。
11月に、生前のカートが身に着けていたカーディガンが突如オークションにかけられたのだ。それはただのカーディガンではない。ニルヴァーナのベストライブと称されている1993年の「MTVアンプラグド」の際に着ていたもので、ファンなら喉から手が出るほど欲しい激レアグッズ。
ポケット部分には大きなシミが付いていて、ボタンも欠けているという不完全な保存状態にも関わらず、最終的に14万800ドル(約1700万円)で落札された。
ちなみに同じオーディションにカート・コバーンの「髪の毛」が出品されるという珍事件も発生。まさに2015年にしてなお勢いを感じられるエピソードである。
死後も話題になり続けるのはカリスマの証。しかしこのフィーバーがなぜ没後20周年の2014年でなかったのかは謎だ……。