お祭り好きの日本人なら知っておくべき、夏〜秋の風物詩「音頭」について

2015.08.23

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「祭り」の専門家が「音頭」のルーツを教えてくれた

この夏、「音頭の復活」が各所で叫ばれている。岡村靖幸と民謡歌手・木津茂里という異色の組み合わせによるコラボレーションシングル「東京音頭 -TOKYO RHYTHM」や、河内音頭の大家である河内家菊水丸の芸能生活35周年記念シングル「本日は晴天なり」、AKB48初の音頭曲「一歩目音頭」など大物による音頭曲のリリースが続いているほか、DJフクタケによる音頭ミックスCD『ヤバ歌謡3 -音頭編-』のように音頭に対して新しいアプローチを試みた作品も話題を集めている。

 

◎「音頭=ドドンガドン」とはかぎらない!

だが、「音頭」とはいったいどのようなものなのか、楽曲構成や定義も含めて実は結構曖昧なものでもある。音頭の象徴とも言える「ドドンガドン」のリズムがどこからやってきたのか。音頭はどのようにして現在の形となったのか。大変手前味噌ながら、先頃刊行された筆者の新刊「ニッポン大音頭時代~『東京音頭』から始まる流行音楽のかたち」(河出書房新社)ではそうした音頭の謎の解析を試みてみたのだが、ここではその内容にダイジェスト的に触れながら、音頭の現在について紹介していきたい。

この日本では「伊勢音頭」や「秋田音頭」など数多くの音頭が各地で伝承されている。そうした伝承音頭に「ドドンガドン」というリズムを聴くことができるかというと、実はそのリズムが入った伝承音頭はほとんどない。それどころか、土地によって歌やリズムの形式は大きく異なっており、いずれも「東京音頭」や「オバQ音頭」に代表されるような音頭のイメージからすると素朴なものばかりだ。

地域によって異なる音頭形式の「全国統一」を成し遂げたのが、昭和8年に発表されたご存知「東京音頭」だ。作曲・中山晋平、作詞・西條八十、歌・小唄勝太郎と三島一声。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった作詞作曲家コンビと、絶大な人気を誇るスター歌手だった小唄勝太郎によって吹き込まれたこの曲は大ヒットを記録。以降、音頭といえば「東京音頭」のスタイル──「ドドンガドン」というリズムに囃子言葉、「ハァー」で始まる歌い出し、三味線の印象的なフレーズ──という図式が定着するようになる。なお、ここで象徴的に使用されている「ドドンガドン」というリズムは、小唄や俗曲といったお座敷唄における三味線のフレーズをモチーフにしていると思われる。つまり、「東京音頭」は土着的な民謡ではなく、お座敷唄のムードを確信犯的に採り入れたものであり、当時最先端の流行歌でもあったのだ。

 

◎「東京音頭」は替え歌だった

ちなみにこの「東京音頭」、実は「元ネタ」となる曲が2曲存在する。

1曲は昭和7年に発表された「丸の内音頭」。藤本二三吉の吹き込みによって世に出たこの歌は、東京・丸の内~有楽町の旦那衆が地元の商店街を盛り上げるために企画したものだったが、その盛り上がりに目をつけたレコード会社がより幅広い客層にアピールする「東京音頭」を企画した。つまり、「東京音頭」は「丸の内音頭」の替え歌として世に放たれたのだった。

また、もう1曲の元ネタが「鹿児島小原良節」。鹿児島を訪れていた中山晋平が地元の芸者に「鹿児島でもっとも人気のある歌を歌ってくれ」と依頼。そこで歌われた「鹿児島小原良節」の三味線の前弾き(イントロ)に注目した中山は、そのフレーズを「丸の内音頭」のイントロにそのまま借用するのである。なお、中山晋平の前で「鹿児島小原良節」を歌った芸者はその後、新橋喜代三という名でレコードデビュー。中山晋平の妻となり、中山がこの世を去るまで添い遂げることとなる。

 

◎アニメやポップスなどと融合する「音頭」

「東京音頭」以降、数多くの音頭が流行歌の歴史にその名を残している。時にはアニソンやアイドルソング、コミックソングとも合体し、軟体動物のように姿形を変えながら現在まで生き延びているわけで、音頭とは流行歌の歴史におけるモンスターのようなものとも言えるかもしれない。

そんな音頭に対し、現在様々な新しいアプローチが試みられている。冒頭で触れたAKB48の「一歩目音頭」などもそうしたアプローチのひとつだが、この夏、野宮真貴がピチカート・ファイヴ時代の代表曲のひとつ「東京は夜の七時」を盆踊りでカバーしたことも話題を集めた。その名も「東京は夜の七時音頭」。土着的で田舎臭いものの代名詞とされがちな盆踊りと、ハイセンスでクールな野宮真貴/ピチカート・ファイヴが融合してしまうなんて、90年代であれば想像すらできなかっただろう。

また、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の劇中音楽を手掛けて日本レコード大賞作曲賞を受賞した大友良英は、近年、盆踊り/音頭に関するユニークなアプローチを続けており、「ええじゃないか音頭」や「池袋西口音頭」など独自の新作音頭を次々に発表している。

「東京音頭」が発表されてから80年以上。現在も夏になると日本各地で「ドドンガドン」という音頭のリズムが鳴り響き、老若男女がそのリズムに合わせて身体を揺らしている。まさに日本列島に住む人々のハートビートともいうべき音頭のリズムが鳴り止むことはないだろう。

TEXT BY 大石始

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