Base Ball Bear
エクストリーム・シングルで幕開けた4ヵ月連続リリースを締めくくる、Base Ball Bearの最新アルバム『C2』。経験を重ねていくうちに芽生えた、バンドとは? 音楽とは? に彼らはどんな答えを用意したのだろうか。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
30歳を超えて、今、バンドがめちゃめちゃ楽しい
──前作『二十九歳』から1年5ヵ月ぶりとなる通算6枚目のアルバム『C2』が完成しました。
湯浅将平 音がめちゃくちゃカッコよくて、自分でも何回も聴きたくなるような非常に良い作品になったなって思います。
小出祐介 もうバッチリだなっていう感じですね。
関根史織 私もバッチリです(笑)。
堀之内大介 30歳を超えて、今、バンドがめちゃめちゃ楽しいんですよね。その、バンドの良い感じが全部ちゃんと出てるんじゃないかと思います。
──結成から14年、メジャーデビューから9年目となる今、バンドが楽しいというのは?
小出 やっとバンドの楽しさがわかってきたんですよね。自分が好きでやってきた音楽が仕事になって、かつ、僕らの場合はバンドなので、プロのミュージシャンって一体なんだろうね? 本当のバンド活動ってなんだろうね? っていうことを考えてきて。『二十九歳』からの1年半でやっとバンドという概念がわかってきた。うちにとってのバンドという概念と友達になることができたと言いますか……。
まだ見えないポイントを提案するっていう考え方
──Base Ball Bearにとって、バンドとはどういう概念だと理解しました?
小出 今までは我々4人を束ねている“そうめんの紙”がバンドなのかなって思ってたんですよ。
──束ねるものを“バンド”って言いますしね。
小出 そう、うまく言うと(笑)。でも、実際は僕らが乗ってる気球のことをバンドっていうんだなって思って。僕らはカゴに乗って、その風船に対して熱い空気をずっと送り続けなきゃいけない。気球の高度が上がれば上がるほど空気を送り込むことが難しくなる。その、温かい空気を送り込むボンベがバンドを動かすエネルギーで。
それはクリエイティブと言い換えてもいいかもしれないけど、ボンベの中身は無限でもなく、有限の資源だと思うんですよ。でも、ボンベは何本もストックしていくことが可能で。ひとつのボンベしかない場合は、1回高いところまで上昇して終わりになってしまうけど、うちのバンドの場合は、たくさんのボンベをも持っていて、その都度新しいボンベに変えて、空中散歩しながら追加できる。
景色が変わっていっても、Base Ball Bearという気球に新鮮な温かい空気を送り込むことができるのが、うちのバンドの柔軟さだなって感じて。……という話を、数日前のライブのMCでしゃべりながら思いついたんですけど(笑)。
──あはは(笑)。今回はどんなボンベを使いました?
小出 全体的なことでいうと、ひとつは肉体性なのかなと。うちらは自分たちがやっている音楽のジャンルをギターロックであると自認しつつも、ギターロックというジャンルに対して懐疑的なスタンスをとっているし、ずっと挑戦的な気持ちでやってきていて。今はみんなが同じことをやっているし、フェスを例に挙げるまでもなく、受け取り側が共有し過ぎちゃってるものがあるなと思うんですよね。
だから、うちのバンドとしては、ギターロックってこういう感じだよねっていうバイアスを外して、音的にも言葉的にも、本来のギターロックというジャンルができることをもっと解放したいなと思っています。それは、別にカウンター的な意味ではなく、次に来るだろう、まだ見えないポイントを提案するっていう考え方なんですけどね。
生々しく伝わるような音を録りたい
──聞き手が求めているもの、流行っているもの、フェスで盛り上がるものという、答えがわかっているものを作るのではない姿勢を見せるってことですよね。それが肉体性に繋がっている?
小出 肉体性を言い換えると、絵が見えるっていうことなのかなと。今はあまりにも聴き手のニーズをフィードバックした音作りをしてる気がするんですよ。これはある種のバック・トゥ・ベーシックなんですけど、バンドというのは本来、“誰が、何を、演奏するのか”かが重要だと思うんですね。
だから、曲が良いのはもちろん、より人間力が大事になってくるというか。自分たちがカッコいいと思ったバンドマンは人間味があるし、自分たちも“こういう人たちが演奏してます”っていうのを生々しく伝わるような音を録りたいなと思ったんです。
──たしかに本作はこの4人でしか出し得ない生のグルーヴがサウンドになっています。デジタルでいくらでも直せるし、ひとりでも作れる時代ですけど、バンドという形態にも憧れてしまうような魅力に溢れていました。
堀之内 今回、ドラムセットは全曲、ほぼ全部違うものを使ってるんですよね。曲ごとにドラムのサウンドはいろいろ考えて変えているし、音も全然違うので、楽器を好きになってもらうきっかけだったり、バンドって面白いんだぜっていうのを感じてもらいたいですね。
関根 前作『二十九歳』より前は楽器を演奏することに必死過ぎて、一生懸命に演奏するだけだったんですけど、前作から演奏がすごく楽しくなってきたんですよ。今作はより、楽器を演奏することの楽しさややりがいが表現できたと思うし、サウンドもすごく生々しい音が録れて。それこそ歳を重ねるごとに変わってきた楽器に対する思いや人間味を感じとってもらえるんじゃないかと思います。
湯浅 リズム隊がすごかったので、僕はソロでは前に出るけど、抑えるところは抑えて、とにかく自分らしく演奏しようっていうのを心掛けてました。
小出 生々しい音を録りつつ、かつピッチ的にも気持ちよく聞こえるっていうことにこだわっていて。だから、時間はめちゃくちゃかかったんですけど、自分たちが好きだった昔の音を引き継きながら、これからのバンドシーンに大事だろうなっていうことがこもってる音になったと思いますね。
また『C』というところにテーマがいってるんだなと
──それぞれが音を鳴らしているだけでは達成しないグルーヴ、生のバンドサウンドを追求した作品に、1stアルバム『C』を想起させる『C2』というタイトルをつけたのは?
小出 元々はセルフタイトルの予定だったんですよ。自分たちの乗ってる気球についてのアルバムであれば、『Base Ball Bear』でもよかったんですけど、これはやっぱり、現時点での記録だなって思ったんですね。最終的にはマスタリングが終わってから決めたんですけど、歌ってる内容を考えると、また『C』というところにテーマがいってるんだなと思いまして。
──『C』のタイトルには彼女のShe、海のSea、Cityの頭文字のCなどのテーマが入っていましたが。
小出 今回は、見るのSee(シー)ですね。視点のシーや主観のシー、思うで思想のシーでもいい。“2”をつけたのは、『二十九歳』で1ターム目が終わって、バンドとして2周目に入ったっていう意味。うちのバンドが考え過ぎるくらい考えてるっていうことが『C2』というタイトルには詰まってるし、改めてこれから10年、まだまだやれることがいろいろあるなとも感じてて。これまでの10年はうちのバンドがどういうバンドなのかを自覚していく10年間だったけど、これからはボールは友達のように、バンドは友達として付き合っていけるし、どんどんすごいアルバムが作れるんじゃないかっていう良い予感しかないですね(笑)。
リリース情報
2015.11.11 ON SALE
ALBUM『C2』
EMI Records
[初回限定エクストリーム・エディション/3CD]¥4,500+税
[通常盤/CD]¥3,000+税
[受注生産限定(アナログレコード)/2LP]¥4,800+税 ※12.02 ON SALE
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ライブ情報
Base Ball Bear Tour「三十一歳」
11/12(木)千葉・LOOK
11/14(土)埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
11/21(土)群馬・高崎club FLEEZ
11/22(日)山梨・甲府Conviction
11/29(日)大阪・Zepp Namba
12/04(金)東京・豊洲PIT
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プロフィール
ベースボールベアー/小出祐介(g、vo)、関根史織(b、cho)、湯浅将平(g)、堀之内大介(ds、cho)。2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するため結成。2006年に1stミニアルバム『GIRL FRIEND』でメジャーデビューを果たす。